イベント報告
新エネルギーシンポジウム
日程 2005年1月26日(水)
開催時間 13:30〜17:00
開催場所 東京国際フォーラム
主催 (財)新エネルギー財団
風力、太陽光など再生可能なエネルギーは、エネルギー安定供給の確保、地球環境保全の観点から更なる普及が望まれる。ビジネスとしての発展策を探ろうと(財)新エネルギー財団は、2005年1月、第3回の「新エネルギーシンポジウム」を東京で開催した。新エネルギーを普及させる方策を各界の有識者が討論。課題は多いものの一定の方向性は見えてきた。

 パネルディスカッション出席者(順不同)
 栗原 史郎
 一橋大学大学院商学研究科教授
 大木 良典
 三菱重工業(株)技術本部主幹
 鈴木  亨
 北海道グリーンファンド事務局長
 中村 寿文
 青森県八戸市長
 武井  務
 (株)NTTファシリティーズ代表取締役副社長
 荒木由季子
 経済産業省資源エネルギー庁新エネルギ−対策課長

 コーディネーター  
 深尾 典男
 日経BP社 開発室部長
 


新エネルギーの実力を検証 
 風力、太陽光などクリーンエネルギーをビジネスの視点でみるとどうか。「市民風車」に携わってきた北海道グリーンファンドの鈴木氏は、2003年度末現在の国内風力発電の導入実績は67.8万kW、1位のドイツ(1400万kW)などに比べるとケタが違うと指摘、「国内では商用電力として市場性は出てきているものの、ビジネスとして離陸するには時間がかかる」と風力発電の現状を語った。風力発電システムを世界で1773台売った三菱重工の大木氏も同様の認識だ。
 太陽光発電システムについては「発電効率は10%程度。日本は世界の半分近いシェアを持つ太陽電池製造のトップランナーだが、まだ1kWh当たりの発電コストが高いのがネック」(NTTファシリティーズの武井氏)。ただ「アモルファス太陽電池や既設の屋根にも取り付け可能なシステムなどが技術革新によりもう1桁コストが下がれば十分経済性がある」と新技術で活路を拓くことに期待を寄せた。
 そんななかで「環境・エネルギー産業創造特区」に認定された青森県八戸市が推進する、マイクログリッド(新エネルギーも使った分散型電源の地域ネットワークを形成、送電を安定化する方式)の実証実験は、新エネルギーの普及を後押しする明るい話題だ。太陽光発電、風力発電、バイオガスなどの新エネルギーを組み合わせ、自営線を設置して学校や公共施設を結び、地域内で安定した電力・熱供給を行う。市長の中村氏は「2010年度の新エネ導入目標を最終消費エネルギーの6%に高めることを目指す」と語った。


市場形成に向けて何が有効か
 新エネルギーの市場形成に向けてどうすべきか。経済産業省の荒木氏は、2004年に策定された新エネルギー産業ビジョンに基づき、「新エネルギーの需要拡大に向けて、その価値を認めた人が金を払うグリーンパワー活用ビジネス育成など新たなビジネスに取り組む企業を支援していきたい」と、市場プッシュ型から市場プル型への構造変革の必要性とその支援について語った。さらに「今後は、モデル的先進事例としてマイクログリッド的発想であまり負荷をかけずにいかに多く導入するかに知恵を絞った計画に集中的に投資する」と、量産化、低コスト化を実現する技術開発支援にシフトする方向性を示した。
 一橋大学の栗原氏は、新エネルギービジネスが自立できる条件について、「市民、自治体、企業、NPOなどが全員参加して新エネルギーを支援すること、地域における分散型の未利用資源を活用しようという合意が前提」と指摘。「企業が自らのリスクで新エネルギーを導入すると経営資源が分散する恐れがある。そこでグリーン電力証書などの購入などを通じて新エネルギーの普及に間接的な貢献を行い、このことを社会にアピールしてマーケティング活動にも使う方法が有効」と語った。
 北海道グリーンファンドの鈴木氏は、市民出資の風力発電「市民風車」の事例を紹介し、「デンマーク、ドイツなどでは設備容量ベースで80%の風車は市民あるいは共同組合が所有する。制度の整備も大事だが、市民参加が新エネルギー普及にとって大きな鍵を握るのではないか」と風力発電に対する社会の共感が不可欠と強調。八戸市の中村氏は、自治体主導で推進する新エネルギー普及のポイントについて、「極力民間の発想を入れる、専門家の意見を聞く、先進地に学ぶ」を挙げ、「地域の持つ特性をいかに活かすかが大事」と結んだ。
 NTTファシリティーズの武井氏は、マイクログリッド型の新エネルギービジネス支援が有望とし「新エネルギー導入の際には、親和性があり地球にやさしい直流給電がいいのではないか」と、直流給電のメリット、優位性などを解説した。三菱重工の大木氏は、「RPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)が施行されて、我々も風力、太陽光の国内展開を始めたが、RPS制度は各々の自然エネルギーを生かすという手順にはなっていない」と苦言を呈した。


エネルギー立国に向けて
 議論は、2005年に開始する定置型燃料電池の実験を踏まえ、燃料電池戦略のあり方などへ発展した。一橋大学の栗原氏は、「燃料電池はエネルギー源ではなく水素を使うエネルギー変換装置であり、最終的には再生可能なエネルギーから水素をつくる技術が重要」と指摘。三菱重工の大木氏は、「燃料電池は二次エネルギーであり、技術の進歩で水素経由でなくても天然ガスから直接燃料電池にするという概念もある。一次エネルギー、二次エネルギー、三次エネルギーは議論を分けた方がいい」と語った。
 経済産業省の荒木氏は、「燃料電池についてはインフラ整備と原料とのセットで議論する必要がある。今の燃料電池がややブーム的であることも事実だが、二次エネルギーであるがゆえに関わる人の裾野が広い点に、燃料電池の可能性を感じる。多くの企業の資本が集中的に投下されると技術進歩が早まるのではないか」としたうえで、「基盤技術、安全面での技術など多分野での基礎研究が重要。予算面、体制づくりで支援することにしている」と、支援の考え方を示した。
 最後に各氏からのメッセージ。「新エネ社会への移行には、エネルギー教育と夏時間導入などライフスタイルの変革が必要」(栗原氏)、「新エネルギーの初期需要開拓にとって東京都がスタートさせた、新エネルギーの採用を一定比率義務付けるグリーン電力調達に期待したい」(鈴木氏)、「電力系統との接続基準の設置など、制度や規格面でも長期的視野で取り組むべき」(武井氏)、「日本は他国からエネルギー全体で10兆円買っている。その金額を新エネに向けるという発想が重要」(大木氏)、「RPS法の見直しに入ったのを機に、補助金だけでなく諸制度などを含めた環境整備をしていきたい」(荒木氏)などの発言で締めくくった。

(日経ビジネス3/28号特別編集版・掲載広告より)

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