IEA-ESHA Joint Workshop 発表紹介
2006年9月25日 新エネルギー財団
水力本部国際部


2006年6月7-9日に英国スコットランドにて開催された少水力発電に関するHIDROENERGIA2006コンファレンスに参加する機会を得たので、その中で行われたプレゼンテーションの一部を紹介する。
 

開催場所 Crieff-Scotland, United Kingdom
開催日時 6月8日 14:00〜18:15

ワークショッププログラム
  第1部 IEA水力実施協定小水力発電専門部会とヨーロッパ小水力協会(ESHA)
第2部 小水力に係わる研究・開発についての最近の動向
第3部 小水力発電専門部会への参加国における研究・開発、課題
第4部 討論と結論

第1部 IEA水力実施協定小水力発電専門部会とヨーロッパ小水力協会(ESHA)
  1. 小水力発電ネットワーク(TNSHP : Thematic Network on Small Hydropower)
 
(Ms. Laguna、ESHA)
   小水力発電ネットワーク(TNSHP)の概要と活動成果が紹介された。 TNSHPは、研究・技術開発のための第5次枠組みプログラム(EUユs FP5)に含まれる「エネルギー、環境及び持続可能な開発(ENERGIE)」の中の1つのプロジェクトであり、欧州委員会運輸・エネルギー総局(European Commission ミ DG TREN)とスイス政府の基金を受け、2003年3月から3年に渡り各種活動が行われた。
 TNSHP活動には、11の組織(ADEME (France)、Studio Frocio (Italy)、KO (Austria)、SERO (Sweden)、EPFL-LCH (Switzerland)、MHyLab (Switzerland)、SCPTH (France)、ISET (Germany)、IT Power (United Kingdom)、Lithuanian Hydropower Association (Lithuania) 及びESHAが参加し、ESHAがそのコーディネーターを勤めた。
 TNSHPは、EUおよびEU加盟候補国内での小水力部門における、発電コスト、世論の容認、エネルギーシステムへの一体化、技術的課題、環境影響ならびに白書における設備容量の目標達成に関する今後の調査及び市場の需要を明らかにすることを目的として、主要テーマとして次の事項が挙げられた。

(1) 小水力の市場化(政策、取引課題、小水力に関する統計)
(2) 環境上の統合(統一的な設計、バイオエンジニアリング、維持流量、環境規制等)
(3) 技術分野(土木工事、機械・電気機器)
TNSHPは、現在までに次のようなレポートを発行している。
(1) 小水力発電の研究開発戦略
(2) 開発途上国のための小水力発電(小冊子)
(3) 小水力発電所の環境上の統合(小冊子)
(4) 小水力発電の開発ガイド
(5) 新規EU加盟国における小水力発電の現況
(6) 小水力発電事業者のためのチェックリスト
(7) 小水力発電の革新(リーフレット)
(8) EU-25における最新の小水力発電
(9) 小水力発電の土木工事のための標準化と設計ルール(報文とソフトウエア)

  2. IEA水力実施協定:専門部会-2(小水力発電)
 
(Mr. Beutin、小水力専門部会責任者フランス環境エネルギー管理庁)
   IEA水力実施協定及び小水力専門部会の活動が紹介された。 IEA水力実施協定はOECD諸国の中から有志国が参加して、1995年から水力に関する様々な課題について研究している。
小水力専門部会はその中の一つの作業部会であり、小水力に焦点を当て、特に、様々な情報交換に重点を置き、各種政策・施策の実施における相乗効果を得ることを目指している。  小水力専門部会への参加国は、カナダ、中国、フランス、日本、ノルウエーの5カ国、及び非加盟国ではあるが提携者としてヨーロッパ小水力協会(ESHA)が活動に参加している。
2005年度以降の活動計画として、まず、小水力に関する情報・技術の交換を目的としたウエブサイトの構築・展開を行っている。 また技術面では、小水力事業界での経験と公的な研究開発プログラムに焦点を当てて、小水力に係わる革新的技術とその適用に関する研究活動を進める予定である。 第3番目は国際的な活動であって、開発途上国の技術者を対象とした訓練プログラム等が検討されている。

  3. 小水力発電ネットワーク(TNSHP)活動の成果
 
(Mr. Denis、MHyLab、スイス)
   小水力発電ネットワーク(TNSHP)による活動成果としての「研究・開発・デモ計画」が紹介された。 
まず、活動成果の一つとしての「再生可能エネルギーとしての小水力のための研究・開発・デモについての計画提言」という表題の研究報文が紹介された。 この報文はユーロッパの政策決定者を読者対象として、小水力の潜在量、障害、最新技術、研究開発等について概観し、小水力に係わる研究開発の必要性を明らかにし、開発と改革の余地(特に低落差地点の経済性の改善、水力発電と環境との一体化について)のあることを明示している。
二つ目は、「Innovation is our business」という表題の冊子で、一般市民を読者対象として、小水力は革新的技術分野であること、又その他再生エネルギーと同じく新しい技術分野であることを訴えている。
次に、技術的課題の優先度として、土木工事部分では構造物の標準化・システム化、水車関係では低落差水車、発電機関係では低速及び可変速運転などが、管理・モニタリング部分では機器類の標準化とソフト支援が、並びに環境課題では環境影響評価の標準的手法などが、更に、非技術的分野では、手続きの簡素化、維持流量の正しい定義、地域住民の水力容認が課題であると述べた。

第2部 小水力に係わる研究・開発についての最近の動向
  4. 低落差用水車について
 
(Mr. Leclerc、MJ2 Technologies、フランス)
   フランス研究・教育省、環境エネルギー管理庁(ADEME)及びカナダ天然資源局(NRCan)から補助金を受けて実施された超低落差タービン発電機の研究開発が紹介された。 水力先進国においても、数多くの超低落差地点が未利用で残されているが、その理由の一つに、経済的競争力のある超低落差タービン発電機を製作できるメーカがなかったことや、現在の超低落差発電機はタービンの上下流に大規模な土木工事が要求されるために更に経済性が損なわれことが挙げられる。
  紹介された機器は、低速回転(34rpm)、大型ランナー径(3.55〜5.50m)、小さい流速(2m/s以下)、完全な水中型、並びに土木工事の最小化という特徴を有している。 研究は実用化の段階に入り、最初の実証機はMillau(南フランス)で設置が予定されている。その実証機(ランナー径4.5m、落差2.5m、出力450kW)は現在製作中で、既存の取水路(幅6m)を利用して設置される。

  5. 小水力事業者の立場から見た小水力の研究プロジェクトについて
 
(Mr. Moissonnier、フランス)
   発表者はフランスアルプス地方で小水力発電事業を行っており、自己の発電所を実証試験現場に提供して新規タービン開発研究に携わった経験が紹介された。
そのプロジェクトは、スイス、フランスの両政府とユーロッパユニオン(UE)から資金を受けて、既設の2輪フランシス水車(210KW)をカプラン水車(330KW)に置換えるものであった。タービン研究は2000〜2003年まで行われ、2004年末に製作を終え、2005年2月に試運転を始めたが、その研究は当初予定の25ヶ月から大幅に延長することとなった。 
資金面についても、当初予算(_480,000)から大幅な増加となった(_700,000)。超過分について資金援助を受けるために多大な労力を費やした。 保険会社はプロトタイプ型機器への保険付与を嫌い、保険料は非常に高いものなった。 新しいタービンの性能には満足しているが、予算と工期とも当初計画から大幅に超過する結果となり、小規模事業者にとっては相当に厳しいものであった。

  6. フランスにおける共同研究の経験
 
(Mr. Corbet、タービン製造業協会(SCPTH)、フランス)
   フランスにおける実業界・研究機関・行政のエネルギー機関を交えた共同研究が紹介された。 技術的課題の一例として、騒音の低減、生物分解性の油、将来を見通した維持管理などについて、共同研究が実施済みで、現在では、IEC標準に準じた小水力タービンの性能試験(Acceptance Test)規則の標準化についての共同研究が実施中である。

第3部 小水力発電専門部会への参加国における研究・開発、課題
  7. ノルウエーでの小水力発電に係わる研究開発
 
(Mr. Juliussen、水資源・エネルギー管理庁(NVE)、ノルウエー)
   ノルウエーにおける小水力に係わる研究開発について2つの事例が紹介された。
その一つは、地理情報システム(GIS)を用いた小水力に係わる包蔵水力調査である。 基本情報として、地図情報、河川系、流量統計(1961-1990)、道路と送電網を用いて、地点、出力、発電電力量、投資額等を算出する。 一例として“Luster Municipality”について手動計算結果と対比させたところ、ほぼ似通った結果となり満足できる精度を得た。
二つ目は、導水路建設のための新しい削孔技術である。 危険かつコストのかかる人力による立導水管工事代え、削孔方向を自由に制御できる削孔機を導入することで、安全な工事が可能になることを述べた。

  8. カナダ政府による水力エネルギー研究開発と国際協力プロジェクト
 
(Mr. Tung、カナダ天然資源省エネルギー技術センター(NRCan-CETC)、カナダ)
   カナダ政府による水力エネルギー研究開発と国際協力プロジェクトが紹介された。
カナダの小水力出力は1800MWあり、年間150MW程で増加し続け、10年後には3500MWと推定されている。 水力エネルギー研究開発(HERD)は、流れ込み式水力発電(50MW以下)について、そのタービン、F/S・設計、環境保全等の研究開発を支援している。 F/S・設計部門では、低廉な自動制御機器、旧式・廃棄済み発電所の改装・復旧、F/S・設計手法の改善などに、 タービンについては、計算流体力学(CFD)によるより効率的なタービンの開発、低落差タービン(20m以下)、マイクロタービン(100KW以下)などにスポットを当てている。

  9. 日本における小水力
 
(礒野、(財)新エネルギー財団、日本)
   日本からのプレゼンテーションは、「水力開発の促進対策(平成17年)、資源エネルギー庁電力・ガス事業部 電力基盤整備課」を基に、水力開発の課題と水力開発促進のための施策を取り上げその各項目を紹介すると共に、その具体策としてNEFが実施主体となっている「ハイドロバレー計画促進調査」と「小水力資源有効活用技術開発調査」の概要が紹介された。
(添付資料を参照)

  10. フランスにおける包蔵水力を考慮したアプローチ
 
(Mr. Beutin、環境エネルギー管理庁(ADEME)、フランス)
   フランスにおける包蔵水力を考慮した将来のアプローチが紹介された。
水力発電の設備容量は25GW、発電電力量は70TWhで、その水力地点の50%以上が5MW以下の設備容量である。 水力発電コストは_30-60/MWh(\4-8/kwh)で、原子力の_28(\4/kwh)、火力の_32(\4/kwh)よりも幾分高くなるが、CO2排出を考えるとコスト競争力はあると考えられる。 長期的に見た場合の発電可能量は約28TWhあり、その内訳は10MW以上(23TWh)、10MW〜100KW(3TWh)、100KW以下(1TWh)であるが、そのうち開発可能発電量は13.4TWhと半減する。 水力発電に必要な今後の投資額は、_1500-2700/KW(\21-38万/KW)と想定されている。
非技術的分野における今後の課題として、維持流量に関する科学的調査、環境影響評価及びモニタリングの手法、プロジェクト実現化のためのツールの開発(例えば、地域計画との一体化、プロジェクト規模や機器選択のためのソフトの開発など)、小水力発電のマーケッティングの開発などが挙げられている。

第4部 討論と結論
  1. 発電電源の中で環境に優しいグリーン電力のシェアーを高めるための計画が必要である。
  2. 小水力に係わる研究開発の基盤作りに、IEA水力実施協定:小水力発電専門部会とヨーロッパ小水力協会との間での協働の機会を高めていく。
  3. TNSHPの報告書を発展させる将来の活動分野として、維持流量の正しい定義付けと適切な流況、水力構造物の標準化、低落差タービンの効率化、環境に配慮した既存発電所の改修・機能向上などの分野が考えられる。
  4. 小水力発電専門部会の活動として掲げた3つのサブタスク(革新的技術、小水力発電の機能回復・向上と近代化、社会システムと経験)活動にESHAが協力し、共同して活動を推進していく。
  5. その他
a) IEA 水力実施協定ウエブサイト 【www.ieahydro.org
b) ヨーロッパ小水力協会(ESHA)ウエブサイト 【www.esha.be/


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お問合わせ先
〒102-8555 東京都千代田区紀尾井町3番6号(秀和紀尾井町パークビル6階)
財団法人新エネルギー財団 水力本部 国際部
担当:礒野、山本
TEL:03-5275-9824 FAX:03-5275-9831

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