震災復興に向け、自治体と民間企業が共同で再エネを最大活用するため、太陽光発電(1600kW)や蓄電池を含むエネルギーマネジメントシステムを導入し、自営線を介して隣接する下水処理場等に電力を供給する取組みである。
電力は自治体、民間企業の出資による地域新電力により供給し、自営線やエネルギーマネジメントシステムによる系統への逆潮流防止を図っている。また、太陽光余剰電力を下水汚泥の乾燥システムや水素の製造に利用するなど、再エネの最大限有効利用と災害対応をおこなっており、他地域への展開が期待できるものとして高く評価された。
東日本大震災の復興から地域経済の活力再生に向けた新しい街づくりの一助となることを目指し、先進的な再生可能エネルギーの地産地消と最大有効利用、防災機能の充実、地域活性化をコンセプトとしたスマートコミュニティ事業の推進拠点「そうまIHIグリーンエネルギーセンター(SIGC)」を2018年4月に相馬市内の工業団地に開所した。
相馬エリアの系統制約から、SIGC内の太陽光発電電力は専用の自営線でSIGC内施設や近隣の下水処理場等に供給し、地域の温室効果ガス削減に貢献するほか、太陽光余剰電力を地産地消型エネルギーマネジメントシステムにより、系統に逆潮流することなく蓄電池への充電や、熱及び水素に転換し最大有効利用する“再エネの地産地消”を実現している。
余剰電力の一部から電気ボイラで生成した熱(蒸気)は下水汚泥の乾燥に利用し、下水汚泥の減容化と産廃費用の削減を実現したほか、これまで未利用だった乾燥汚泥をペレット化し農業用肥料やバイオマス燃料としての展開を実証中である。
また、余剰電力の一部から水電解装置で生成した水素は非常時に燃料電池発電に使用し防災拠点に専用配線で電力を供給できるようになっている。2020年9月には、SIGCの再エネ由来水素を使用したIHI研究施設「そうまラボ」を開所し、来る水素社会に向けた先進水素利用研究をオープンイノベーションの形で研究機関等と推進すべく準備中である。
電力の供給は、IHI、相馬市、パシフィックパワーの3社で設立した地域新電力会社「そうまIグリッド合同会社」が行っている。SIGC周辺は自営線による電力供給(特定送配電事業)のほかに、市役所や小中学校等の市内公共施設にも電力供給(小売電気事業)を行い、地域のエネルギーと経済の循環を担っている。また、本事業での再エネ関連の様々な取り組みを知ってもらうべく、地域のイベントで子供たちに体験してもらう機会を提供する等積極的に活動している。
現在、より一層の再エネの拡大とSIGCの機能強化を推進中である。2020年10月には自営線を延伸し,ごみ焼却場に太陽光発電電力の供給を開始したところである。加えて、SIGCの太陽光発電設備と蓄電池を一般送配電系統停電等の非常時にも使用できるようにする「強靭化」、水素生成時に発生する「副生酸素の有効利用」を目指した水耕栽培・陸上養殖研究や、温室効果ガス削減関連研究等を実施予定である。
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