帯水層蓄熱冷暖房システムは、地下水を熱エネルギーとして地下に広がる帯水層に蓄熱して建物の冷房・暖房を効率的に行う技術である。2本の井戸を通じて地下帯水層を蓄熱槽として利用するものであり、一方の井戸を温熱蓄熱井、他方を冷熱蓄熱井として地下帯水層を年周期的に交互利用するものである。
温熱蓄熱井と冷熱蓄熱井の交互利用により、他システムと比較して効率の高いエネルギー利用を実現するとともにコスト低減化(イニシャル21%、ランニング31%低減)を図った。また、地下水の全量還元や専用ヒートポンプの開発、無散水消雪施設を連結することで冬期は消融雪による冷熱蓄熱強化、夏期は太陽熱による温熱蓄熱強化を図っており、積雪寒冷地域を中心に展開が期待できるものとして高く評価された。
帯水層蓄熱冷暖房システムは、欧米各国では広く普及しているものの、日本では普及が進んでいない。普及が進まない理由として、都市部において厳しい地下水の採取規制があること、地域によっては地下水の全量還元が難しいこと、既存の冷暖房システムと比較しイニシャルコストが割高であること等の課題が挙げられている。
高効率帯水層蓄熱冷暖房システムのこれまでの開発経緯として、平成23年度から平成25年度の3年間、環境省「地球温暖化対策技術開発・実証研究事業」に採択され、帯水層蓄熱冷暖房システムの日本国内における適応性や、他方式に対する優位性に関する実証事業に取り組み、その成果として地中熱ヒートポンプ冷暖房システムへの高い優位性を示すことができたが、安定的な地下水全量注入の達成や、分割注入による蓄熱分散等が課題として残った。
これら課題に対する解決と、更なる高効率化へ向けた技術開発を目的に、NEDO「再生可能エネルギー熱利用技術開発事業」による採択を受けて、平成26年度より5か年にわたって研究開発に取り組んできた。この事業では、日本地下水開発株式会社の関連企業社屋を対象として実証施設を導入して、2年にわたって(夏期冬期各2シーズン)稼働データの計測および解析を行い、課題であった地下水の全量注入、太陽光集熱器の併用による蓄熱増強によって温熱と冷熱の蓄熱量バランスを実現する「高効率帯水層蓄熱冷暖房システム」を開発した。
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