II. 廃棄物発電システムの導入促進に関する提言の概要 |
廃棄物発電は従来、環境整備事業の中での未利用エネルギーの利用促進という観点から採用されていたが、RPS制度の実施により廃棄物発電のうち廃プラスチック類を除くバイオマス由来の発電分をRPS制度対象としてRPS価値が認められてきた。
平成23年3月11日に発生した東日本大震災・大津波による原子力発電所事故を起因に、温暖化防止に向けて原子力発電に大きく依存した我が国のエネルギー政策は抜本的な見直しが行われており、災害復興の中でも新たなエネルギーシステム実現に向けて、分散型のエネルギーシステムの実現を目指すことが明記されている。廃棄物発電は、まさに電力消費地に隣接した分散型の安定電源であり、しかも調整可能な電源である。 このような中、平成24年7月施行の「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」(以下「FIT制度」という)において廃棄物発電のバイオマス比率分の固定価格買取が認められているが、導入普及を図るうえで、まだまだ支援が十分とは言えない。 このため、これまでの提言並びに最新の状況を踏まえて、新エネルギー産業会議廃棄物発電委員会として次の通り提言する。 |
基幹的設備改良工事等における発電能力増強施設に対する支援措置を |
環境省の平成23年度調査結果によれば、一般廃棄物焼却施設のうち稼動年数が16年以上の施設は全体の61.9%を占め、稼動年数の長い施設ほど発電設備を有している施設は少ない。
既設炉の発電効率を高効率発電の交付要件に該当する効率に引き上げた場合の発電能力増強分を発電能力増強ポテンシャルとして算定したところ、21~25年稼動の施設で約9万kW、16~20年稼動の施設では約14万kW、11~15年稼動の施設では約7万kWの発電能力の増強が可能であり、これらの既設炉の発電能力増強ポテンシャルの合計は約30万kWと試算された。 一方で、一般廃棄物発電で、基幹的設備改良工事等で発電能力を増強しても、殆どの場合、発電出力の増加分を配線図等により確認することも、分離して明確に計測することもできない。したがって、基幹的設備改良工事において発電能力を増強しても、多くの場合発電設備の「更新」と認められず「変更」扱いとなり、変更後の出力相当分について現に適用されている調達価格および調達期間がそのまま適用されることとなる。 最も発電能力増強ポテンシャルの大きな16~20年稼動の焼却施設で、基幹的設備改良工事等により発電能力を増強しても、「更新」と認められずに「変更」の扱いとなる場合は、FIT制度における買取期間の残存期間はなくなっている。同様に、11~15年稼動後の施設でも、基幹的設備改良工事等の完了時点では、調達期間の残余期間は極僅かしか残らない。このため、いずれの場合にも設備投資の回収に支障をきたす。 この時、発電能力の増強に伴う設備の改造費用は高額であり、施設の運転管理や機器の点検整備に要する費用負担も増大する。 このため、廃棄物発電施設の総発電能力を効率的に増強するために、基幹的設備改良工事等の実施後の出力増加分が20%以上の場合には、RPS認定施設、FIT認定施設を問わず「更新」の扱いを適用して、新規にFIT制度の適用を行えるように支援措置をして頂きたい。 |
廃棄物発電における固定価格買取制度の見直しを |
現在のFIT制度による買取単価は、大規模施設における試算値を基に決定された経緯があり、全国にある廃棄物処理施設の規模を考慮しているとは言い難いものとなっている。
例えば、昨年(一社)日本環境衛生施設工業会が行った試算では、廃棄物発電の規模別で発電原価に大きな差が現れ、内部収益率(IRR)4%を考慮した調達期間20年の売電単価(FIT制度)において150t/日規模の施設と600t/日の施設で3倍近い価格差があることが指摘されている。 一方、平成26年度の調達価格等算定委員会での見直しにおいては、建設費の実績が高くなっていることを確認してはいるものの、事例が少ないとの理由で前年度の価格を踏襲する方向で議論されており、今後の廃棄物分野における再生可能エネルギーの普及意欲にブレーキをかける恐れがある。 以上のことから下記の見直しを提言する。 2‐1 規模別の調達価格設定を 廃棄物発電の規模別に調達価格を見直して頂きたい。
2‐2 調達価格算定データの開示を
調達価格見直しのための客観的データについては公表することが重要である。
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廃棄物発電における系統連系工事に対する支援強化を |
送電線等系統連系の工事費用については、RPS制度の下では引き込み負担金として一部の負担であったが、FIT制度の対象となる施設については、送電設備としてすべて事業者の負担となった。
循環型社会形成推進交付金では、電気、ガス、水道等の引込みに必要な設備については、交付対象となっている。しかし、FIT制度の下で発電所で送電線とみなされた場合には、廃棄物処理施設に送電設備という考え方がなかったことから交付対象となるかは明確になっていない。 このため、送電線等系統連系工事に対する費用負担を循環型社会形成交付金対象として明確にして頂きたい。 |
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