新エネルギーの導入促進に関する提言
[平成27年度]

Ⅱ.廃棄物発電システムの導入促進に関する提言
廃棄物発電における買取価格の見直しを
 現在のFIT制度による買取単価は、大規模施設における試算値を基に決定された経緯があり、中小規模の廃棄物処理施設の実情を考慮しているとは言い難いものとなっている。
 例えば、(一社)日本環境衛生施設工業会が行った試算では、廃棄物発電の規模別で発電原価に大きな差が現れ、内部収益率(IRR)4%を考慮した調達期間20年の売電単価(FIT制度)において300t/日規模の施設と600t/日の施設で1.8倍近い価格差があることが指摘されている。
 一方、平成27年度の調達価格等算定委員会での見直しにおいては、建設費の実績が平均として高くなっていること、特に中小規模の施設において高くなっていることを確認してはいるものの、一定出力(6,000kW)以上の施設において大きな差がないとして調達価格を据え置くとしている。
 環境省の施策として小規模施設における発電を含む再生可能エネルギーの利用を推進しているが、施設数で枢要を占める中小規模施設に廃棄物発電の導入を推進するためには、施設規模に応じた調達価格の設定を行い、調達価格算定の基準となるコストデータの開示は必要かつ不可欠のものであると考える。
 以上のことから次の見直しを提言する。

(1) 廃棄物発電における規模別の調達価格設定を
現在廃棄物発電施設として一律で設定されている調達価格について、施設数で枢要を占める中小規模施設に廃棄物発電の導入を推進するために施設規模別に複数の設定とするように見直しをして頂きたい。
(2) 調達価格算定データの開示を
調達価格算定の基準となる制度開始以降得られたコストデータを開示して頂きたい。
発電設備付一般廃棄物焼却施設における設備利用率向上(発電能力増強施設)に対する規制緩和および支援措置を
 環境省の平成25年度調査結果によれば、一般廃棄物焼却施設1172施設のうち発電設備の有する施設は328で全体の28%であり、発電設備を有している施設はまだまだ多いとは言えない。
 一方で、既存発電設備の利用率は年間280日稼動として約67%と推定され、まだまだ設備利用に余裕がある。この余裕は、計画ごみ質に幅があり、この中央付近のごみを処理する場合には届出の施設処理能力に余裕を生じるという廃棄物処理施設の設備設計上の特性によるものと最近のごみ減量化効果により処理量が減少したことによるものとを合わせた結果と考えられる。
 既存設備の余裕を効果的に活用する方策として、処理量規制の緩和という費用負担の必要がない道がある。
 以上から、発電設備を有する一般廃棄物焼却施設において、発電設備利用率を向上させる取組が積極的に推進されるよう次の通り提言する。

発電設備付一般廃棄物焼却施設における設備利用率向上に対する規制緩和および支援措置を
(1)当該施設の設計入熱範囲内でごみ処理量の規制緩和を
当該施設において、環境アセスメントにおける排ガス総量の枠内で、ごみ処理量を設計入熱の範囲内で許容するように処理量の規制を緩和する。
(2)地域の実情に合わせての一般廃棄物以外の廃棄物を補助燃料とする発電増強計画および関連施設整備等の工事費へ積極的な支援を
地域の実情に合わせて一般廃棄物以外の廃棄物を補助燃料として発電電力量を増強する計画および関連施設整備に関する工事費用に対する積極的な支援を行って頂きたい。
FIT制度での廃棄物発電の調達価格設定を5年程度に
 一般廃棄物発電では事業化決定~FIT認定まで3~4年、FIT認定~運転開始2~3年となり、地熱発電や風力発電と同程度になる。
 さらに、「再生可能エネルギー導入促進関連制度改革小委員会 報告書」では、「買取価格の決定時点は事業実施の確実性が確認された新たな認定時とすることが適当である」とされている。これが適用された場合、現行ではFIT認定後、系統接続を申し込んだ時点で調達価格決定となっているものが、電力会社との系統接続の契約など事業の実施可能性を確認した時点が調達価格決定となる可能性があり、今以上に調達価格決定までに時間を要する可能性が高い。以上から、次の見直しを提言する。

FIT制度での廃棄物発電の調達価格設定を5年程度に
 5年程度FIT価格が決定されることで、一般廃棄物発電施設を設置する市町村等の事業予見性が向上し、再生可能エネルギーの導入による低炭素社会実現とエネルギー自給率の向上に寄与できることから、バイオマス発電のリードタイムについては、導入数、導入容量が多い一般廃棄物発電施設のリードタイムを基軸とした5年程度の調達価格決定を求める。
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