新エネルギーの導入促進に関する提言
[平成27年度]

Ⅲ.バイオマスエネルギーの利活用に関する提言
国内森林資源の効果的な利用に向けた提言
 エネルギー自給率の向上および地球温暖化の防止に貢献するためには、国内森林資源を効率的にかつ安定的に利用する体制を早期に確立する事が必要となる。
 現在の素材(丸太)生産は国際競争力が低いため、国内供給量の大部分を輸入品が占めており、エネルギー需要も満たす供給体制は確立されていない。一方、国内の人工林のうち伐期を迎えている林分については主伐および再造林が必要であるが、様々な要因により素材(丸太)生産の観点からは生産効率が低い間伐が選択されやすい状況である。
 適切な間伐と伐期を迎えた人工林の主伐および再造林の推進に向けて、伐採され た素材(丸太)は最大限効果的に利用されると共に、林業が安定的なエネルギー供給も担う体制整備を行うため、次の通り提言する。
1-1 木質バイオマス利用コスト低減に向けた総合的な検討の推進
 生産および収集のコストを負う木質バイオマスを利用する発電では、木質バイオマスが可能な限り高効率に発電に供されることと、従来の建材等用途に適さない素材(丸太)が効率的に生産、流通、エネルギー利用される仕組みが必要であるが、現制度・技術等のままでは実現困難である。
 このため、用途によらず一体的かつ高効率な素材(丸太)生産体制を目指したFIT制度のあり方、生産性向上に必要な施業方法、設備投資、技術開発等のあり方、補助金等を含む制度および施策のあり方について、各課題が緊密に連携し、かつ相互に補完できるような省庁横断的形での総合的な検討の推進を提言する。
森林管理と素材(丸太)生産性向上の両立を目的とするICT基盤の整備
 国内森林資源の効果的なエネルギー利用推進は、ともすると経済的観点のみが先行しやすく、場合によっては乱伐を招く可能性があるため、森林資源の適切な管理が前提とされるべきである。
 森林資源の適切な管理を行うためには、森林資源の賦存状況について把握することが重要であるが、現在のところ森林情報は十分に収集されていない。
 また、現行の森林情報は、都道府県・市町村・林業事業体が、個々のシステム・個々のデータで運用しているが、「情報の精度が低い」・「組織ごとに保有している情報の共有化ができていない」・「個別に開発・運用しているので、コストが高い」・「ユーザー毎に利用できる情報が限定されている」・「必要最低限の活用しかできていない」等の課題を抱えている。
 このため、立木管理の段階からICTを活用し、立木ごとに立地場所や形状等を管理すると共に、それらの情報を施業計画に反映することが望ましい。
 これらを統合的にくみ上げて地域森林資源を見える化する「スマートフォレストリー」のアイデアは非常に有効と考えられるので、次の通り提言する。
2-1 ICTを活用した森林の情報化「見える化」の基盤整備推進
 FIT制度導入による素材(丸太)ニーズ増大を契機として、適切な国内森林資源の管理と革新的な素材(丸太)生産性向上を両立すべく、「森林の見える化」の全体構想の検討、技術開発や実証事業等の投資を国が行う。
 また、これらの取り組みは、従来の林業分野だけではない視点で開かれた議論を行う新たな組織が推進し、具体的な運営は民営を主体とすることを提言する。
バイオガス利用の加速化に向けた提言
 わが国で発生する食品廃棄物、家畜糞尿、下水汚泥などの湿潤系バイオマスは、年間1,200万炭素トンにのぼり、全バイオマス発生量の3割を占めている。
これら湿潤系バイオマスは、多大な回収可能なエネルギーを有するものの、含水率が高いため、直接燃焼させるボイラー発電のようなエネルギー回収には不適である。このため当委員会ではメタン発酵によるバイオガス生成が、このような湿潤系バイオマスからのエネルギー回収に適した技術と考え、その導入促進のための施策を検討してきた。
これを踏まえて本委員会で検討したところ、バイオガス利用の加速化に向けていくつかの課題が未だに存在し、導入普及の足かせとなっていることが判明したため、その解決を願い、次の2つの提言を行う。
3-1 バイオガスの製造・利活用事業を支援する提言
食品廃棄物などの湿潤系バイオマスは処理費として逆有償(バイオマス排出者が支払う)で取り引きされた場合、自治体を跨いでバイオマスを広域に収集することができない。湿潤系バイオマスが逆有償であってもバイオガスエネルギーを製造するための有効な原料としてみなすために、廃棄物処理の規制を緩和し、新規設備導入障壁を緩和することを提言する。
3-2 バイオガスの製造・利用裏術の開発や導入を促進する提言
一般的にバイオガス発電設備は発電容量が小さいものが多く、そこに用いられるガスエンジンなどの発電機も小容量のものが多い。これらバイオガス発電でのガスエンジンは国産のものが少なく、ほとんどは輸入品に頼っている。

一方、現在のバイオマスエネルギーに関する補助制度では、化石燃料とバイオマスを混合する場合、バイオマス依存率が義務付けられたり、副燃料での化石燃料の常用使用が除外されたり、発生したバイオガスの安定使用が困難となっている。
従って、バイオガス利用時の化石燃料混合など、バイオガス安定使用方法を検討する技術開発、導入検討、技術検証などを支援する施策を講じることにより、小容量ガスエンジン設備等の開発支援を行うことを提言する。
PDF形式 1.83MB
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