政府は本年、6月4日に2024年版令和エネルギー白書を閣議決定しました。2004年から毎年作成され、今回が21回目となります。
白書は、例年3部構成。第1部が各年度のエネルギーを取り巻く動向、第2部が国内外におけるデータ集、第3部がエネルギーに関する施策集です。以下、資源エネルギー庁のH Pを元に第1部を中心にそのポイントをご紹介します。
●第1部の構成
●第1部①〜③のポイント
福島復興の進捗の中では、大きな出来事として、「ALPS処理水」の海洋放出を開始を取り上げています。放出の安全基準、モニタリング、IAEAの安全レビューなどの取り組みが紹介されています。また、福島の居住制限解除状況や復興の取り組みの進捗も述べています。
エネルギーセキュリティについてはその重要性及びエネルギーを巡る不確実性の増加という状況を記述しています。エネルギー安定供給への懸念の中、サプライチェーン全体でのセキュリティ確保が求められます。このような情勢の中、石油や天然ガスの市場価格は2010年代に比べて2〜3倍の水準となっています。加えてカーボンニュートラルを目指す取り組みにより、LNGなどの上流部門への投資が減少していること、「GX」X「DX」による電力需要の増加が見込まれることなど、新たな変数が増加している状況も指摘されています。また、足元の「円安」による化石燃料の輸入額の増加により、2022年には過去最大の貿易赤字(年間20兆円趙)を記録しています。エネルギー自給率が12.6%(2022年度)の日本において海外にエネルギーを頼る構造はリスクにさらされ続けます。白書では徹底した省エネ、脱炭素エネルギーへの投資促進などによりエネルギー危機に強い構造へと転換することの重要性を指摘しています。
2023年11〜12月開催のCOP28では世界全体の脱炭素の取り組みの進捗が確認。「世界の気温上昇を1.5°に抑えるという目標まで隔たりがある(オントラックではない)」という評価です。化石エネルギーを中心とした産業構造・社会構造を変革し、CO2を排出しないクリーンエネルギーへと転換する「GX」に向けた取り組みが進んでいます。日本では2023年7月に「GX推進戦略」を策定、12月には「分野別投資戦略」をまとめました。クリーンエネルギーとして期待される低炭素な「水素等」、またCO2を分離回収貯蔵する「CCS」事業などに関する法律が成立しています。
エネルギー白書2024には第2部でエネルギー動向として、需要構造、1次エネルギー需給概要、さらに国際的なエネルギーコストなどのデータが紹介され、第3部では、水素、アンモニア、再生可能エネルギーの導入拡大策原子力政策、GXの推進戦略などの政策、施策がまとめられています。日本や世界のエネルギーの今を知り、今後を考える上で重要な資料です。是非、ご一読ください。
【参考】