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FIP制度への移行について(その3)
―急がれる市場環境整備―

FIP制度移行に伴い、発電事業者自身が卸電力市場で電力を直接販売していくことに関しては種々の課題がある。

第1に発電事業者自身が卸電力市場で電力を直接販売できるノウハウや体制を有していない。直接販売のためには、発電量の予測を行い、発電計画を作成し市場での販売を行い、最後にはインバランスの精算を行うこととなる。これらを自身で構築するかあるいは別の事業者に委託するかについての検討も必要となる。このように受給バランスを管理する体制を含めて事業者の育成が早急に求められる。

第2に再エネを販売し、需給調整する市場環境が未成熟である。現在の市場設計は必ずしも再エネ事業者が参画しやすいようになっていない面がある。例えば、日本の当日市場では、市場終了時間(ゲートクローズ)が1時間前となっているが、風力や太陽光においては、発電量は天候に左右されるため、ゲートクローズ時間が実需給に近づくほど予想が外れなくなる。FIP制度について、先行して経験を積んでいるドイツでは、発電量の予測誤差を少なくするためゲートクローズ時間30分前、5分前まで開発されている。

第3に再エネの事業収支に大きな影響を与える需給調整市場やインバランス料金制度については制度設計の段階となっている。需給調整市場については、2021年開設を目標に広域機関の委員会で審議中の段階となっている。また、同様にインバランス料金制度については、2022年度開始を目標に電力・ガス取引監視等委員会で中間とりまとめが公表されたところである。

FIP制度開始に際しては、拙速な直接販売の義務化を行うのではなく、これらの市場整備状況を見つつ、適切な移行期間を設定すべきではないかと考える。

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