「古紙を原料にバイオエタノール製造へ ENEOSとトッパンが実証開始」とい記事が、環境情報オンラインの2024年03月05日に掲載されたので説明いたします。古紙からバイオエタノールと、最初に記事を読んだ時には、古紙の利活用という点で魅力はあるが少し奇異な感じを受けた。ただし、古紙の原料が木材であることを考えれば納得ができる。
そもそも、バイオ燃料であるバイオエタノールの製造は1970年代後半よりアメリカでエネルギー、環境、余剰農作物といった各種課題解決のため主としてとうもろこしからバイオエタノールが製造され、ガソリンとの混合が実施されていた。さらに1990年以降では、改正大気浄化法施行やMTBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)の代替でバイオエタノールの重要が増加した。さらに、2005/06年度ではとうもろこし生産量の17.6%がバイオエタノール需要量というデータもある。ただし、原料となるトウモロコシは重要な食物である点が大きな課題と考えられる。
ちなみに、今回古紙から高純度なセルロースを抽出し、そのセルロースからバイオエタノールを製造するが、製造方法はお酒の製造と基本的に同じであり、サトウキビの糖質や米、トウモロコシ等でんぷん質作物を原料として糖化や発酵、その後の蒸留で無水エタノールを製造する。一方、廃材や木材チップから作った紙等のセルロース系の原料からバイオエタノールを製造することも技術的には可能で、今回この内容を紹介いたします。
糖化発酵については、植物の細胞壁に存在する主要な成分で、木材や草本などのバイオマスに含まれているセルロースをエタノールなどの燃料に変換することで、セルロースを単糖であるグルコースに分解するプロセスである糖化と、糖化されたグルコースを微生物(通常は酵母)によってエタノールに変換する発酵が基本的な必要技術となる。
なお、環境ビジネスオンラインの記事によれば、以下のような検証を行うことになっている。
次にメリットおよび課題については以下のように考えられる。
古紙から作るバイオエタノールのメリット:
再生可能な資源の利用:古紙は廃棄物として処分されることが多いため、これを再利用してエネルギーを生み出すことで、廃棄物の削減と再生可能な資源の有効利用が促進される。
→ これらのメリットから、古紙を利用したバイオエタノール生産は持続可能なエネルギー供給の一環として注目されており、多くの国や企業がこの技術の開発と普及に取り組んでいる。
古紙から作るバイオエタノールの製造にはいくつかの課題:
古紙の品質と前処理:古紙はインクや他の汚染物質が含まれていることが多く、これらを効果的に除去する前処理が必要です。また、古紙の品質によっては糖類の収量が低下する可能性がある。
→ これらの課題を克服することで、古紙を効果的に利用した持続可能なバイオエタノール生産が実現することが期待されます。研究開発や技術革新が進むことで、これらの課題の解決に向けた取り組みが進められている。
記事によれば、実証における古紙投入量は約1~3トン/日で、この取り組みにより、バイオエタノールを1日あたり約300L生産する。建設地は現在選定中で、2026年度にパイロットプラントの稼働を開始する予定になっており、効果や課題について新たな発表がなされることを期待した。
【参考資料】