一般的に廃棄物から資源化する方法としては、物理的リサイクル、化学的リサイクル、生物的処理、エネルギー回収が考えられ、前回バイオマス活用における注目技術・要素⑧-古紙を原料にバイオエタノール製造- では、古紙からのバイオエタノール製造を紹介した。克服すべき課題も多いが、期待すべき技術と考えられている。
今回2022年4月11日に積水化学から、「“ごみ”を“エタノール”に変換する1/10スケールの実証プラントが岩手県久慈市に完成」という記事が発表された。また、同技術について2022年8月29日にNHKから、「可燃ゴミがエタノールに!“資源大国ニッポン”の可能性も?」との記事として取上げ、さらに、2023年11月27日にForbes Japanから、「積水化学が新技術で「守破離」に挑む 循環型社会を目指す世界初のバイオリファイナリー事業とは」として取上げられたことを受け、ゴミからエタノールという内容について紹介したい。
一般的にごみからエタノールを製造する方法としては、セルロース系廃棄物(木材廃棄物、紙、食品廃棄物など)を原料として、化学的および生物的プロセスを使って行われます。さらに工程としては、以下となる。
この中の1.廃棄物の前処理においては、選別・破砕工程として、ゴミの中からエタノールの原料として利用できるセルロース系廃棄物(植物由来のバイオマス)を選別し、細かく粉砕して表面積を増やす工程が一般的であり、何からの選別工程が必要となります。
ただし、2022年4月11日に積水化学から発表された、ニュースリリースでは、「ごみ処理施設に収集された可燃ごみを分別することなくガス化し、このガスを精製の上、ランザテック社が開発した微生物により、化学触媒や熱・圧力を用いることなくエタノールに変換する生産技術」とあります。(下記BRエタノール技術を参照のこと)
つまり、ゴミの分別が不要という大きな特徴を有していると考えられるのです。
同年8月29日のNHKの記事では、運び込まれたゴミは約5センチ角に裁断し、1000℃以上に熱した砂の中で蒸し焼き状態にすることでゴミは完全に燃え切らず分子レベルにまで分解されて「ガス」になり、「微生物」を利用して、ガス(COとH2)からエタノールを生成するとのことです。また、この微生物はウサギの腸内にいる安全なものと紹介されている。微生物を使ってエタノールを製造する技術も注目すべき大きな特徴となっている。
さらに、その後発表されたForbes Japanからは、「可燃性ごみを分別することなくガス化し、微生物の力でエタノールに変換する新技術(BRエタノール技術)により、可燃性ごみ→エタノール→プラスティック製品→可燃性ごみという、これまでになかった資源循環の実現が可能になります」と記事になっている。さらに、「本格稼働は、26年以降を目指しています。この技術により生まれたエタノールは、プラスティック製品の原料となりうるほか、持続可能な航空燃料(SAF)としても活用できます」とあります。
同NHK記事では、1日20トンの可燃ゴミで1~2キロリットルの見通しとのことで、取材時点では実現していないが、99.5%という高濃度のエタノールの生産が間近ということである。
現時点では、生産量やコスト等の課題も考えられるが、ごみからエタノール、航空燃料(SAF)の製造、および資源循環の実現という、廃棄物の利活用の点で、発電等以外において大きな可能性を有した技術にため、できれば本格稼働の結果等について改めてご報告していきたいと考えます。
積水化学とランザテック社は、ごみ処理施設に収集された可燃ごみを分別することなくガス化し、このガスを精製の上、ランザテック社が開発した微生物により、化学触媒や熱・圧力を用いることなくエタノールに変換する生産技術を2017年に確立しました。世の中に大量に存在しながらその工業利用が極めて困難であった“ごみ”を、化石資源に替わる資源として利用することを実現しうる、革新的な技術です。通常可燃ごみは焼却の上発電利用等されていますが、BRエタノール技術により、ごみをガス化することで発生する二酸化炭素の一部もエタノールに転換することで二酸化炭素の排出の抑制にも貢献します。
【参考資料】
※本説明には一部ChatGPTを活用しております。