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バイオエタノール燃料の導入について

今から19年ほど前の2003年8月に、揮発油等の品質の確保等に関する法律の施行規則の改正が行われた。自動車の燃料用の揮発油の品質の規格が改正され、「エタノールについては3容量%以下であること」及び「アルコール類等の含酸素化合物の酸素分は1、3質量%以下であること(ETBE(エタノールとイソブテンの化合物)換算で約7~8パーセント程度以下であること)」が追加された。この基準値までであればエタノールやETBEをガソリンの中に入れても安全上問題はないとされたところである。前者がガソリンとバイオエタノールを直接混合して使う場合の基準であり、後者がETBEを利用した場合の基準である。

当時、地球温暖化対策としての京都議定書は既に締結され、まだ発効はしていなかったものの達成に向けた準備が進められていた段階で、輸送分野におけるバイオエタノール燃料の導入策は、環境省の強いイニシアティブのもとに推進されたものである。2005年4月に閣議決定された京都議定書目標達成計画においては、輸送用燃料におけるバイオマス由来燃料の導入量として2010年に原油換算で50万KL(輸送用燃料全体の約0、6%相当)を見込んでいる。上記の二つの方式にはそれぞれ一長一短がある中で、結局石油連盟はETBE方式で21万KL分を行うことを目指し、環境省は独立系のスタンドと連携してエタノール3%混合(いわゆるE3 以下同様に表記)を推進することとなった。そのため環境省が2007年度から5年計画で開始したのがエコ燃料実用化地域システム実証(委託事業)であり、サトウキビ等の原料資源のある宮古島、建築廃材等の利用が期待できる大阪、そして首都圏の3か所で事業を展開したところである。これが我が国の輸送分野におけるにおけるバイオエタノール燃料の導入の始まりである。

この事業においては宮古島及び大阪にバイオエタノールの製造拠点を設けたほか、ガソリンとバイオエタノールの混合設備や貯蔵設備等を整え事業を展開したものであり、2014年7月に取りまとめられた「京都議定書目標達成計画の進捗状況」という資料によれば、50万KLという目標に対し24万KLの達成とされている。内訳は書かれていないため推測になるが、石油連盟が後述するエネルギー需給構造高度化法の縛りもあって計画通り21万KLを達成したとすれば、環境省事業は3地域合計で年間に3万KLの供給を行って実証事業を終了したようである。さらに、環境省においては、この実証事業の成果を生かす形で沖縄本島において本格普及事業(2011年度~2013年度)を立ち上げ、さらにE10も加えた供給体制確立事業(2014年度~2017年度)を推進したが、2016年度の環境省の行政レビューにおいて「自立商業化は困難であり、国の支援方策や採算性を含め検討すべき」とされ、事業は予定された期間の途中で廃止された。

また、経済産業省では2009年に成立したエネルギー供給構造高度化法によりバイオエタノールの利用目標を定め、石油精製業者に目標の達成を求めることとなったが、利用目標は2011年度の21万KL(原油換算)から2017年度に50万KLとされたものの、その後は2022年度まで横ばいの50万KL(輸送用燃料全体の約1%)に止まっている。

以上述べたように我が国の輸送分野におけるバイオエタノールの導入は停滞しているが、世界の動向を見ると、状況はかなり異なっている。ブラジルではサトウキビから作ったバイオエタノールで、E25とE100を行っており、アメリカもトウモロコシを原料にE10を行っている。EUも国ごとにばらつきはあるがE5以上での導入を進めている。途上国においても、タイ、フィリピン、インドネシア等多くの国で導入が進められており、特にタイでは2013年以降エタノールの混合されていないガソリンの販売が停止され、E10,E20、E85の普及が行われている。こうした世界の動向は自動車メーカーにも影響を与えており、トヨタやホンダの生産する車はすでに国内向けを含めE10対応車になっているとのことである。

以上の経緯から導かれる教訓は次の2点である。

  • ①国土が小さく平地の少ない我が国はバイオエタノール燃料の生産余地に乏しく、小規模であることによる高コスト体質を克服することは難しい。
  • ②バイオエタノール燃料は毎年の気候条件等により生産量が異なり、その中でどの国でも国内需要への対応が優先されるため、我が国が安定的に輸入することが難しい。自国内での生産が乏しい中で不安定な輸入に依存することはエネルギーのセキュリティに問題を生じさせるため慎重にならざるを得ない(自給率100%のブラジルやアメリカほどではないにしてもドイツやイギリスでも自給率は50%以上である。日本は2%)。

現在、水素・アンモニアの利用について議論が行われている。生産プロセス等に違いがあるとはいえ、上記の経緯と教訓を踏まえた検討が重要であると思われるところである。

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