従来、日本においてクロスフロー水車の知名度は低かったが、再生可能エネルギーの開発に伴う小水力発電のニーズの高まりから、小水力発電に適したクロスフロー水車への注目度が高まるとともに導入事例も増えて来ている。
クロスフロー水車の歴史は古く、20世紀初頭にオーストリアのAnthony Mchell、ハンガリーのDonat Banki、ドイツのFritz Ossbergerにより発明/製品化された。これにより、バンキ・ミッチェル水車(Banki-Michel turbine)、オズバーガー水車(Ossberger turbine)とも呼ばれる。日本では貫流水車とも呼ばれている。
クロスフロー水車のランナーは30~40枚程度のブレードで構成されるかご型であり、水流は、多くの水車がランナーの回転方向に流れるのとは異なり、クロスフロー水車ではランナーの回転軸と垂直方向に水流がランナーを貫通する。(クロスフローという名前は水流がランナーを通り抜けることに由来)これにより水流はランナーに入る際と出る際の2回通過するため、これが水車効率を改善する要因になっている。
またクロスフロー水車では、一般的に大小2枚のガイドベーン(1/3流量相当、2/3流量相当)を設け、流量により組み合わせて使うことにより、低流量域まで高い水車効率を保つことができる。ピーク効率としてはフランシス水車に比べると5%程度下がるが、低流量域までの効率維持により、例えば流れ込み式発電所においては、フランシス水車では年間の流量変動により1/3の日数しか運転できない場所でも、クロスフロー水車では年間を通して運転することも可能となる。
以上の他に、クロスフロー水車には次のようなメリットがある。
ドイツ・オズバーガー社では累計で10,000台以上のクロスフロー水車を100か国以上に納入しているとのことである。
また、ディメリットとしては、ピーク効率がフランシス水車等と比べると劣ること、比速度を大きく選定した場合に、ランナーの長さが大きくなり強度面で問題が発生する可能性があること、などがあげられる。
【参照文献】