グリーン・トランスフォーメーションの加速に向けて
政府は8月27日、「グリーン・トランスフォーメーション(GX)実行会議」を開催し、令和7年度予算の概算要求にGX関連として、総額1兆6000億円規模を求める方針を示した。
脱炭素サプライチェーン(供給網)構築や、中小企業の省エネルギー投資などを支援する。併せて脱炭素投資の拡大、液化天然ガス(LNG)の確保などGX戦略の策定に向けた、たたき台を提示した。令和6年末にかけて詳細を詰める。
概算要求ではペロブスカイト太陽電池や洋上風力など革新的脱炭素製品の供給網構築に2,555億円、持続可能な航空燃料(SAF)の製造設備や供給網整備に838億円を計上した。また次世代革新炉の研究開発支援に3年間で1,152億円、中小などの先進的省エネ投資支援に5年間で2,025億円を充てる。
令和7年度予算としては1兆2000億円規模を要求する。産業競争力や経済成長に資するGX投資など、一部は金額を明示しない「事項要求」とした。
その内訳は以下の通り。
【くらしGX関連】
- EV、PHV、FCVの導入支援(トラック、バス等の事業者向け 基礎充電設備を含む):1,444億円
(例:次世代自動車、トラック、バス、タクシー 等)
- 既存住宅の高断熱窓や高効率給湯器(ヒートポンプ等)の導 入支援:1,880億円
- 商業・教育施設等の建築物の脱炭素改修支援:3年で344 億円(R7年度266億円)
【エネルギー関連】
- SAFの製造設備・サプライチェーン整備支援:838億円
- 次世代革新炉の研究開発支援:3年で1,152億円(R7年 度 829億円)
- 定置用蓄電池導入支援:3年で400億円(R7年度 310 億円)
【産業GX関連】
- 革新的脱炭素製品等の国内サプライチェーン構築支援:2,555億円
(例:ペロブスカイト太陽電池、洋上風力発電設備、蓄電池、水電解装置、 燃料電池 等)
- 排出削減が困難な産業の製造プロセス転換投資支援:870億円
- ゼロエミッション船等の生産設備導入支援: 5年で300億円 (R7年度 143億円)
【横断的】
- 中小企業をはじめとする、先進的な省エネ投資支援:5年で 2,025億円 (R7年度1,743億円)
- 資源循環投資(サーキュラーエコノミー):120億円
- GX分野のディープテック・スタートアップ育成支援:400億円
- 地域脱炭素交付金(自営線マイクログリッド等):100億円
また、「GX2040ビジョンに向けた検討のたたき台」では、「デジタル変革(DX)による電力需要増に対応するため、再エネ、原子力発電所の再稼働や新型革新炉の設置、火力の脱炭素化に必要な投資拡大」を明記した。このほか脱炭素電源や水素などクリーンエネルギー供給地への産業集積、GX製品の価値評価や調達に向けた規制・制度的措置など10項目を挙げた。
【エネルギー・GX産業立地】
- 1.DXによる電力需要増に対応するため、徹底した省エネ、再エネ拡大、原子力発電所の再稼働や新型革新炉の設置、火力の脱炭素化に必要な投資拡大
- 2.LNGの確保とLNGサプライチェーン全体での低炭素化の道筋確保や、国際的な議論も踏まえた石炭火力の扱い
- 3.脱炭素電源や水素等の新たなクリーンエネルギー近傍への産業集積の加速、ワット・ビット連携による日本全国を俯瞰した効率的・効果的な系統整備
- 4.次世代エネルギー源の確保、水素等の供給拠点、価格差に着目した支援プロジェクトの選定
【GX産業構造】
- 5.経済安全保障の要請も踏まえたGXとDXによるサプライチェーン強化
- 6.GXとDXの同時進展
- 7.技術・ビジネス・スケールの3つの要素を最大化したイノベーション創出
【GX市場創造】
- 8. GX製品の国内市場立ち上げに必要となるGX製品の価値評価、調達に向けた規制・制度的措置
【グローバル認識・ルール】
- 9. アジアの視点も加えた体系的・総合的なルール形成
- 10. 欧米の情勢も踏まえた現実的なトランジションの必要性
今後、データーセンター増設によるエネルギー需要の大幅増加が見込まれているため、電力の供給力アップは必須となっている。省エネの徹底や原子力発電所の再稼働等とともに、再エネの一層の拡大が必要だ。グリーン・トランスフォーメーションの前進とともに、目下の再エネの要となっている「ペロブスカイト太陽光発電」、「洋上風力発電」などの益々の発展に期待したい。