再エネの出力制御について(2)―再エネの導入量と最小需要―
再エネの出力制御(1)では、全国における出力制御の現状を紹介し、2024年度の出力制御量が急増する見込みであることを紹介した。出力制御が増加する理由として再エネの出力制御(1)で述べているが、ここでは、主な理由の一つである「変動再エネの導入量(太陽光発電、風力発電)」について「最小需要」との関係を紹介する。
【出力制御の実施時期】
出力制御の時期としては、地域によるばらつきはあるが一般的には、春(3月~6月)及び秋(9月~11月)頃に出力制御量が増加している。年間を通しての出力制御量は、数%程度であるが、上記春、秋の期間に出力制御が集中している傾向にある。
一般的には、春や秋は、気温が穏やかになることで空調の使用頻度が下がり電力需要が減少するなど発電量が需要量を上回り、出力制御量が増えることが主な要因と推定される。
【出力制御量が増加する理由】
出力制御量が増加する理由については、電力管内の個別の事情があるものと思われるが、近年全国的に出力制御量が増加する要因としては、①太陽光発電などの変動再エネの導入量が増加 ②電気料金の高騰による節電(需要の減少) ③他地域への送電量の制約(他地域でも出力制御を実施のため送電を受ける余裕がない)などが主な要因として考えられる。
【変動再エネ導入量と最小需要について】
出力制御が増加している最も大きな要因は、特に太陽光発電などの変動再エネの導入量が増加していることにあり、他の火力発電等の出力制御では十分対応できていないことを示している。
ここでは、出力制御の主な要因となっている変動再エネの導入量と最小需要(2023年度データをベースにして)関係を見てみる。
- (1)全国的に変動再エネ導入量が最小需要を上回っている
2023年度においては、変動再エネの導入量が最小需要を上回っているのは、9電力管内のうち6電力管内(北海道、東北、中部、中国、四国、九州)に増えており、全国的に変動再エネ導入量が最小需要を上回っている傾向である。主な電力エリアの傾向を次に示す。
- (2)九州電力エリア
変動再エネの導入量が最小需要を上回り初めたのは2016年からである。その後も太陽光発電を主体に再エネの導入量が毎年増加している傾向にあり、2023年度には最小需要の約175%に達している。出力制御は、2018年度からわが国で初めて実施しており、2024年は10億kWhの出力制御の見通しとなっており、全国の電力エリアで最も多い出力制御量となっている。
- (3)中国、四国、中部電力エリア
変動再エネの導入量が最小需要を上回り初めたのは、四国電力エリアが最も早く、九州電力エリアと同じ2016年からである。その後も各電力エリアとも太陽光発電を主体に再エネの導入量が毎年増加している傾向にある。2023年度には中国電力エリア、四国電力エリア、中部電力エリアがそれぞれ最小需要の約151%、約166%、約121%に達しており高い水準となっている。出力制御は、中部は2023年度から、四国・中国は2022年度から実施している。
- (4)北海道電力、東北電力エリア
変動再エネの導入量が最小需要を上回り初めたのは、東北電力エリアが早く2019年度からであり、他の電力エリアと同様に変動再エネの導入量が毎年増加している。他の電力エリアとの違いは、風力発電の導入比率が北海道35%、東北20%と高まってきている。両エリアとも出力制御は2022年度から実施しているが、今後の洋上風力の大規模導入によりさらに高まることが懸念される。
以上の通り変動再エネの導入量増加に伴い出力制御率も高まる傾向にある。最近では、関西電力送配電が住宅用の太陽光発電の電力量が大幅に増えた影響で需要を上回る恐れがあるとのことで、中部電力エリアと中国電力エリアに送電を実施している(2024.6.4 電気新聞より)