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再エネの出力制御について(3)―系統用蓄電池への期待―

再エネの出力制御(1)及び(2)では、全国的に出力制御が急増していること及び再エネの導入量と最小需要との関係を示した。また、出力抑制に向けた対策パッケージとして需給両面での対策を紹介した。ここでは、再エネの出力抑制に期待される解決策として、系統に直接接続され特定の電源の出⼒変動ではなく、電⼒システム全体の需給変動への対応に活⽤されている系統用蓄電池の現状について紹介する。

【系統用蓄電池の導入が急速に拡大】

現状(2024.3)系統⽤蓄電池の接続契約等の受付状況として、接続検討受付が約4,000万kW、契約申込が約330万kWとなっており、接続検討及び接続契約は、2023年5⽉末時点と比較して約3倍に増加している。特に、北海道、九州、東北、東京、中部、関西などほとんどの電力管内への導入が進んできている。

系統用蓄電池の導入状況
(第51回系統ワーキング配布資料「系統用蓄電池の現状と課題」2024.5.24配布資料より抜粋)
系統用蓄電池の導入状況

【卸電力市場を活用しての投資が可能】

系統用蓄電池は、電力市場を活用して投資利益が得られるものである。電気は、卸電力市場「JEPX(日本卸電力取引所)」で取引されており、電気料金単価は、日時によって変動する。そのため 系統用蓄電池 を活用すれば、「価格が安いときに、電気を購入し「蓄電」しておき」「価格が高くなったら、放電して「売電」する」ことで、その差額で利益を得ることが可能となる。JEPXでの実際の例を以下に示す。

2024.5.02の市場価格は、グラフのように、9時頃から13時半にかけて、電気料金単価は「0.01円/kWh」ですが、夕方から単価が上がり、18時頃には「15.02円/kWh」まで上がり「約1500倍の電気料金単価」となっている。つまり、この「0.01円/kWh」のときに電気を購入して蓄電しておき「15.02円/kWh」になったタイミングで放電/売電することで「1500倍」の利益を得ることが可能となる。

JEPX 2024.5.02のスポット市場価格
JEPX 2024.5.02のスポット市場価格

【注記】
電気の売買を行う場合、日本国内では 卸電力市場「JEPX(日本卸電力取引所)」で行うこととなるが、その場合「1000kW×30分、500kWh」が最低取引単位となる。但し、事業として考えると3時間分の電気を蓄電するのが目安といわれており、3000kWh程度の蓄電ができる容量が必要とされる。

なお、2024.4から電力市場の動き(容量市場の実運用開始、長期脱炭素電源オークションの開始、需給調整市場の全メニューの開設)により、系統用蓄電池の投資の幅が広がり更に導入の見通しがつけやすくなるものと想定される。

【長時間容量蓄電池による出力抑制を期待】

アメリカでは、6時間以上の蓄電池の導入が本格化してきており、2050年代には全体の5割を占めるとの予想もある。再エネで発電する電気は捨てるのではなくすべて使い切ることが必要である。九州エリアでは出力制御が4時間を超える出力制御も発生している。このような出力制御を抑制するためには、今後の再エネ導入拡大を見据えて出力制御が発生する時間帯をカバーできる時間容量を持つ系統用蓄電池の導入促進が必要と考える。

長時間容量蓄電池による出力抑制
(第51回系統ワーキング配布資料「系統用蓄電池の現状と課題」2024.5.24配布資料より抜粋)
長時間容量蓄電池による出力抑制

【系統用蓄電池の導入費用】

系統用蓄電池 などの大型の蓄電池のデメリットは「導入費用が高い」ことにある。ちなみに、系統用蓄電池の導入費用の目安は、6万円/kWh程度と言われており、例えば、3kWhの系統用蓄電池を導入する場合には「1億8000万円」程度が必要とされる。ただし、近年では蓄電池の導入が進んでおり、また、価格も下がって来ており今後の導入促進に期待したい。

系統用蓄電池の導入費用
(三菱総合研究所 定置用蓄電システムの普及拡大策の検討に向けた調査2023.2.28より抜粋)
系統用蓄電池の導入費用

アメリカ(カリフォルニア州)では、系統用蓄電池の存在感が増しており、2024.4.16の夕方ピーク時間帯において、蓄電池による放電(600万kW超)が同時間帯で最大の供給力となった。蓄電池が最大供給力となるのは史上初とのことである。(2024.6.10 電気新聞より) 温室効果ガス削減に向けて、再生可能エネルギーの受け皿として系統用蓄電池の役割が強まっている。

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