再エネの出力制御(3)では、再エネの出力抑制に期待される系統用蓄電池の現状について紹介した。ここでは、系統用蓄電池の最近のコスト水準や収益性及び主なメーカーについて紹介する。
再エネの出力制御(3)で述べているが、電気の売買を行う場合、日本国内では 卸電力市場「JEPX(日本卸電力取引所)」で行うこととなる。その場合「1000kW×30分(500kWh)」が最低取引単位となるが、事業として考えると3時間分の電気を蓄電するのが目安といわれており、3000kWh程度の蓄電ができる容量が必要とされる。
住宅用の太陽光発電を設置した場合、蓄電池の容量をおよそ10kWh程度とすると系統用蓄電池は、住宅用蓄電池の300倍くらいのサイズが必要とされる。
三菱総合研究所の調査・分析による資料では、2022年度における系統用蓄電池システムの単価は、「総額4.9万円/kWh+工事費1.2万円/kWh」で約6.1万円/kWhだったが、2023年度では、資源価格の高騰や為替変動などの影響により、「総額6.2万円/kWh+工事費1.4万円/kWh」で約7.6万円/kWh(約25%増)となっている。3000kWhの系統用蓄電池を導入する場合、おおよそ2億3千万程度が必要とされる。特に電池部分(2022年度3.6万円/kWh、2023年度4.8万円/kWh)のコスト増が顕著である。一方で、事業者ヒアリングによると、補助金事業以外で海外製の蓄電池システムを採用する場合、総額2~4万円/kWhのコスト水準となり得るとのこと。
系統用蓄電池システムの収益性の分析として卸電力市場を活用した場合について示す。卸電力市場における充放電時のこれまでの値差(円/kWh)を参照年度別に評価して、ダウンサイドシナリオ(充放電時の平均値差・4.45円/kWh)、ベースシナリオ(同10.61円/kWh)、アップサイドシナリオ(同17.54円/kWh)の3ケースで分析している。ベースシナリオは過去5年間(2019~2023)の値差の平均値(10.61円/kWh)であり、このケースの場合は、蓄電池の建設費が5万/kWh以下であれば、一定の収益が見込まれるといえる。
なお、2024.4から電力市場の動き(容量市場の実運用開始、長期脱炭素電源オークションの開始、需給調整市場の全メニューの開設)により、系統用蓄電池の投資の幅が広がることもあり、系統用蓄電池の収益性については、向上するものと思われる。
系統用蓄電池について、世界でどのようなメーカーが活躍しているかについて概略紹介しておく。
(エナジーシフトホームページ゙https://energy-shift.com/navi/1e112a77-c467-4e15-9c33-1204803cc5c3より抜粋)
今後、太陽光発電や風力発電などの変動再エネの導入量の増加に伴い出力制御量が増加することが懸念される。系統用蓄電池は、電⼒システム全体の需給変動に対応し出力抑制をするものであり今後の導入促進が期待される。特に、コスト面、収益面での種々の課題があり対策の具体化を含めて国による推進を期待したい。