水力発電は、再生可能エネルギーの中でも、純国産で、渇水の問題を除き、天候に左右されない優れた安定供給性を持ち、長期的に活用可能なエネルギー源であり、地域共生型のエネルギー源としての役割を拡大していくことが期待されています。その開発・普及促進のための支援策として、水力発電の導入加速化補助金や、買取価格を上乗せすることで投資コスト回収が進みやすくするFIT/FIP制度があります。
この他、SDGsや企業のESG投資等への関心の高まりもあり、地球温暖化対策や再生可能エネルギー等の環境分野への取組みに特化した資金を調達するグリーンファイナンスとして、グリーンボンド(債権)やグリーンローン(借入)などの金融商品、仕組みとその利用が広がってきています。
グリーンボンドは、企業や地方自治体等が、国内外の地球温暖化をはじめとする環境問題の解決を目指す事業(グリーンプロジェクト)に要する資金を調達するために発行する債権です。グリーンファイナンス拡大に向けた市場基盤整備支援事業に取り組む環境省※1のデータ※2によると、日本政策投資銀行が2014年に国内初のグリーンボンドを発行し、2023年度迄に591件発行されています。金融機関による発行が253件で最多ですが、エネルギー関係事業者による発行も73件で2番目のようです。
グリーンローンは、企業や地方自治体等が、国内外のグリーンプロジェクトに要する資金を調達するために用いる融資(借入)です。グリーンボンドより少し遅れて2017年に国内初のグリーンローンが開始されて以降、再生可能エネルギーをはじめとする様々なプロジェクトで利用されています※3。グリーンボンド同様に多くのエネルギー関係の案件(93件)へ融資されています。
再生可能エネルギー分野の利用では、その大半が太陽光発電関連です。水力発電を含むプロジェクトへのグリーンボンド(32件)、グリーンローン(7件)は、まだまだ限定的で、ほとんどが大手電力会社や公営電気事業者によるものです。
そのような中、長野県※4が令和2年から継続して発行している「グルーンボンド」により、十数基の水力発電所(長野県企業局の発電所改修を含む)の設置や補助に利用されています。また、滋賀銀行※5は、奥伊吹観光株式会社が関西電力グループの株式会社KANSOテクノスと合同で運営する「奥伊吹発電所」の建設資金に充当するために発行するグリーンボンドを引受けています。
グリーンローンでは、2023年3月に富山第一銀行※6が「ファースト・グリーンローン」を、富山県魚津市に小水力発電所を建設する株式会社エネパーク富山のプロジェクトへ融資しています。
水力発電所の開発に取り組むにあたり、資金調達・確保は、大きな課題のひとつですが、グリーンファイナンスが広く利用されることで、小規模な事業者による水力発電の開発が進むことを期待します。