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地熱発電で使われる蒸気について

地熱の3要素の1つに「水」があります。地下の熱エネルギーを地上に運ぶ重要な役目を果たします。しかし、地上に上がり、タービンを回すときには、内部エネルギーを蓄えられた気体(蒸気)の状態になっている必要があります。タービンそのものが、内部エネルギーを蓄えた気体により回転する構造になっているからです。タービンを回した蒸気は復水器に導かれ、冷却水により凝縮させて復水器内を真空にすることで負圧を作り、タービンに蒸気を受け入れやすくして多くの出力を得る仕組みにしています。

日本の地熱発電所の大部分で、地上に上げられた「水」は、気体の蒸気と液体の熱水との混合体の状態になっています。その混合体を、セパレータ(気水分離器)で蒸気と熱水に分け、蒸気だけをタービンに送り、熱水を還元井から地熱貯留槽に戻します。これをシングルフラッシュシステムと言います。近年は、気水分離器から出た熱水をフラッシャー(減圧器)に導入して低圧の蒸気を更に取り出してタービンに送るダブルフラッシュシステムを導入する場合があります。

では、地熱貯留層の中で「水」はどういう状態で存在するのでしょうか。多くの場合は熱水卓越型地熱系という形態で、温度が80℃~230℃ほどで静水圧をかけられた状態となっており、液体の状態で存在しています。その「水」が、生産井を上がっていく途中で、圧が解放され一部が沸騰してきて、気体と液体の混合体になっていきます。

ただ、松川のように、日本で唯一の蒸気卓越型の地熱貯留層もあります。その場合、地熱貯留層では気体と液体の二相状態になっており、生産井で地上に上げられた時には蒸気のみの状態となっています。こういう蒸気卓越型地熱系は、世界的にも数は少ないですが、地熱開発の黎明期に開発された多くの地域が、熱水が発生することを嫌ったためこのタイプが先行的に開発されました。

【参考文献】

  • ・「令和元年度 地熱開発技術者研修会テキスト」 新エネルギー財団
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