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地熱探査の難しさ

地熱発電は、他のタービン発電システム(火力・原子力)に比して初期コストが高く、開発以前の調査費含め86万円/kWとされています。開発費の主要部分は地熱井の掘削費であり、1本当たり数億円を要します。従って、掘削を成功させて全ての生産井から大量の蒸気を生産できれば理想的ですが、蒸気や熱水を蓄えた地下の亀裂(断裂系)の存在位置をピンポイントで探すことは、非常に難しいといえます。そのため地熱発電では、地下探査を行っても資源量の把握や将来予測に不確かさが残り、井戸の掘削成功率は100%とはなりません。

地熱探査はどうして難しいのでしょうか。一般的な石油・ガス層と地熱貯留層との違いを示したのが、表1です。石油・ガスの地層は、基本的に水平な地層であり、砂岩という等方均質の岩石であるため、地表から探査を行って地層を特定すれば、そこをターゲットとして比較的容易に資源を得ることができます。ところが、地熱貯留層は不定形な亀裂の集合部分であるため、地表からの探査によっておよそこの辺りが地熱貯留層とターゲットを定めても、必ずしも蒸気をたくわえた亀裂に当たらないというリスクがあります。とくに、地殻応力が圧縮場のことが多い日本の地熱地帯では、鉛直亀裂が発達している場合が多いので、そういう縦方向の亀裂を掘り当てることは、開発初期の段階では極めて難しいといえます。

表4.1 一般的な石油・ガス層と地熱貯留層との違い

  石油・ガス層 地熱貯留層
地層の形状 ほぼ水平な地層
(1か所掘れば周辺も解る)
不定形
(1か所掘っても周辺は解らない)
地層の性質 砂岩:ほぼ等方で均質
(1カ所のデータで全体を推定できる)
亀裂を含む花崗岩:異方性があり不均質
(1カ所のデータでは全体を推定できない)
流体の流路
(資源の存在箇所)
ほぼ均質に存在する孔隙
(流路が推定でき、ターゲットを容易に決定できる)
亀裂部分のみ
(流路が推定しづらく、ターゲットが決定しづらい)
地表の地形 ほぼ平らな平野部が多い
(大型機材を搬入可能)
急峻な山中が多い
(大型機材は搬入不可)
探査費の経済的制約 利益率が高いので多額の探査費をかけても投資回収できる 利益率が低く多額の探査費はかけられない
最も一般的に用いられる
物理探査法
反射法地震探査
(地震速度構造)
マグネトテルリック(MT)法等の電磁探査
(比抵抗構造)

石油探査では、弾性波が地層面で反射する性質を用いた反射法構造探査が広く用いられています。一方、地熱地域では一般的に石油堆積層のような明瞭な反射面が存在せず、反射法はコストの割に情報量が少なく不向きでした。ただし、近年は反射法の解析技術が著しく向上し、反射面が不鮮明で複雑な構造への応用可能性がでてきました。とは言っても、日本の地熱地帯は地形的に急峻な火山地帯のことが多く、大型機材が持ち込めないという制約もあるため、引き続き探査の困難さは残ります。

このように、探査段階においては,開発段階での掘削の成功率を予測するための情報が十分とは言えませんので、フィールドの開発の是非を調べるには3本,生産性を予測するには5本の地熱井の掘削が,最低限必要と考えられています。

【参考文献】

  • ・新エネルギー財団(2019):「令和元年度 地熱開発技術者研修会テキスト」
  • ・諏訪亜紀、柴田裕希、村山武彦 編(2018):コミュニティと共生する地熱利用.学芸出版社

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