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地熱貯留槽の評価及び管理

地熱エネルギーは、再生可能エネルギー、純国産エネルギー及び環境にやさしいエネルギーなどの特長を有し、2019 年1 月時点で国内の認可/認定出力は、合計約53 万kWとなっています。しかしながら、発電所運用に連れて、地熱貯留層のポテンシャル低下やスケール問題などにより定格出力が維持できなくなるケースが報告されています。

地熱発電とは、地熱貯留層に賦存する地熱流体を用いて行う発電のことであり、図1に示すように、 概査、精査、評価・計画、許認可手続、建設、発電所運転のプロセスで地熱開発が進められます。このプロセスの内、具体的には①各種探査・調査(地質調査、物理探査、地化学探査など)、②調査井の掘削と評価、③地熱構造モデルの構築、④数値モデルの構築及び資源量評価、⑤地熱発電所の建設、⑥地熱貯留層管理などの項目に地熱貯留層に関する調査・解析・評価技術が適用されます。さらに、これらの項目は①~④の項目による地熱資源量を評価するまでの地熱貯留層評価と⑥の地熱発電所建設後に安定出力を維持するための地熱貯留層管理に大別されます。

図1 地熱発電開発の流れ.地熱探査から地熱発電所運転開始まで(中西,2014)

地熱貯留層評価と地熱貯留層管理における地熱貯留層の調査・解析・評価・解釈などには、地質、地化学、物理探査、掘削及び貯留層工学などの各分野の技術が必要ですが、さらに地熱構造モデルを構築するための総合解析技術が必要とされます。また、地熱貯留層管理においては、運用中の坑井や地熱貯留層の様々な現象を解析するために、特に地化学や貯留層工学に関する解析技術が要求されることが多くなります。

「地熱開発技術者研修会テキスト」では、地熱貯留層評価と地熱貯留層管理の観点から、以下のように構成しています。

まず、「地熱貯留層の評価と管理」では地熱貯留層の評価と管理に関する基本的概念と調査・評価フローの概要を説明しています。次に、「地熱貯留層評価」では地熱貯留層評価プロセスの内、坑井評価、地熱構造モデル(地熱概念モデル)構築及び資源量評価の各概要について説明しています。また、「地熱貯留層管理」では、発電所運転後にどのような原因によるトラブルが起こるのか、そのトラブルを捉えるためにどのようなモニタリング・解析を実施すればよいのか、などについて説明すると共に、既設発電所でのトラブルの事例やモニタリング計画事例なども併せて紹介しています。さらに、「スケール問題と対策方法」では、多くの発電所で直面しているスケール問題とその対策方法について紹介しています。

【参考文献】

  • ・新エネルギー財団(2019):「令和元年度 地熱開発技術者研修会テキスト」
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