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地熱発電所のスケール付着防止技術(その2)

ここでは、シリカスケール付着防止の5つの技術を紹介します。

(1)滞留槽法
滞留槽法は、熱水を1時間程度滞留させてシリカ(ケイ酸)を重合させることにより、シリカスケールとの反応性に富むモノケイ酸の濃度を非晶質シリカの溶解度以下に低減させる手法です。八丁原・大岳発電所などで適用実績があり、ある程度の効果を上げていましたが、シリカの重合速度が遅い特性(シリカ濃度が低い、pHが低いなど)を持つ地域の場合や熱水の化学組成が変化した場合に、滞留効果が小さくなる場合があります。

(2)pH調整法
シリカスケールは、下式に示すように、スケール表面の解離したシラノール基(≡Si-O-)にモノケイ酸(Si(OH)4)が反応して成長すると考えられています。pH調整法は、熱水に酸(H+)を添加しシラノール基と反応させることにより、シラノール基とモノケイ酸の反応を抑制する手法です。

≡Si-OH⇔≡Si-O-+H+
≡Si-O-+Si(OH)4→≡Si-O-Si(OH)3+OH-

多くの地熱発電所でpH調整法の適用試験が行われ、スケール析出量を低減できることが確認されています。また、pH調整の実施により無調整の場合に比べて還元井の能力低下が抑制されたとの報告もあります(Gallup,1995)。ただし、条件によっては効果が小さい場合があることや腐食対策についても考慮する必要があります。八丁原地域では、2000年からpH調整法を導入し、それまで年間30%程度の減衰率が(広渡,1998)、pH調整後には20%程度まで抑制されました(広渡,1998:清田,2005)。

(3)高温還元法
高温還元法は、熱水温度を高く保つことによりシリカ濃度が非晶質シリカの溶解度以上になるのを防ぎ、シリカスケールの析出を抑制する手法です。地熱熱水のシリカ濃度やpHなどの条件が一定の場合はシリカスケールの析出量は温度に依存するため、発電設備の設計段階で還元熱水温度(セパレーター分離圧力)を適切に設定することによりスケールの析出を抑制することができます。高温還元法は、多くの発電所の還元井や熱水輸送管でのスケール付着防止法として適用されており、概ね効果があります。ただし、高温高圧を保つため発電に利用できる蒸気量が少なくなるデメリットがあります。

(4)希釈法
希釈法は、阿部(1997)により報告されているように、熱水と希釈水を混合することにより、シリカ濃度を非晶質シリカの溶解度以下に低減させる手法です。柳津西山発電所などで適用実績があり、還元井の能力低下抑制効果が確認されています。ただし、還元熱水量が約2倍に増えるため、熱水量が多い地域では還元井の確保が問題となります。また、還元熱水温度が低くなるため、還元熱水が生産ゾーンに回帰してくる地域では生産ゾーンの冷却が問題となります。

(5)過飽和シリカの除去
本手法は、陽イオンや凝集剤などの薬剤を添加することによりシリカを析出させ、熱水中のシリカ濃度を非晶質シリカの溶解度以下に低減させる手法です。いくつかの地熱発電所で試験が行われ、熱水中のシリカ濃度を低減させる効果があることが確認されています。ただし、添加した薬剤が熱水中に残留する、析出したシリカの分離方法、分離したシリカの処理方法などの課題があります。

【ご参考】

  • ・新エネルギー財団(2021):「令和2年度 地熱開発技術者研修会テキスト」

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