4 坑内トラブルと対策(その4)
(4) ストリングス等の抑留と離脱作業(その1)
ストリングス等の抑留には、差圧抑留、地層崩壊による抑留、掘削ザクによる抑留、キーシートによる抑留、ゲージ落ちによる抑留等がある。
1)差圧抑留
差圧抑留は、ドリルカラーが静止状態で浸透性の地層の坑壁(泥壁)に接触しているとき、泥水柱圧力が地層圧力より高いとドリルカラーの表面がこの差圧で坑壁に押付けられる状態になることで発生する。差圧抑留は、高比重泥水を使用している場合に起こりやすく、泥水比重の低い地熱井では発生することは少ないが、小さな割れ目が発達している地層を脱水量が多い泥水で掘削する場合やセメント浚いにより泥水が劣化していると差圧抑留が発生しやすい。
抑留する力は、泥水柱圧と地層圧力の差とドリルカラーが地層と接触している面積から求められ、深度1000m、泥水柱圧115kg/cm2(SG1.15)、地層圧力100kg/cm2、接触面積9000cm2(幅10cm×長さ900cm)とすると135tonとなる。小さな圧力差であっても接触面積が大きいと大きな力が発生し、強引のみで解消されることはほとんどない。抑留が発生した場合は、循環調泥を行い可能な限り泥水比重を下げ、きるだけ早く抑留離脱流体を送入する必要がある。図14に差圧抑留状況図を示す。
2)地層崩壊による抑留
地層崩壊による抑留は、掘削流体による地層の急冷却や粘土鉱物の膨潤等により、地層が崩壊し、崩壊したザクによりストリングスが抑留されることである。大規模な崩壊があるとストリングスが抑留されるだけでなく、泥水循環もできなくなることがある。地層崩壊は突然起こることもあるが、崩壊による抑留が発生する前に、坑内の埋没の増加、カッティングスより大きめの崩壊ザクが上昇してくるなどの前兆があることがある
崩壊による抑留は、強引すると崩壊ザクを固め、循環ができなくなるなど坑内状況が悪化することがある。ビット下部に坑井がある場合は、打ち下げを主な対策とする。抑留離脱流体を使用する場合は、添加剤によっては崩壊を促進することがあるので、その組成を考慮すべきである。図15カッティングスや崩壊による抑留を示す。
【参考文献】