4 坑内トラブルと対策(その5)
(4) ストリングス等の抑留と離脱作業(その2)
3)カッティングスによる抑留
カッティングスによる抑留は、カッティングスの坑外への排除の不完全、坑径拡大した個所や高傾斜部に滞留したカッティングスが、ビットやスタビライザーの周りに堆積することにより抑留されることである。逸泥掘削中に浅部の逸泥層に流入したカッティングスが、下部で発生した逸泥の影響で吐き出されることにより抑留した例もある。
カッティングスによる抑留は、地層崩壊と同様に強引すると悪化することがあり、ビット下部に坑井がある場合は打ち下げを主な対策とする。抑留が発生した場合は、循環調泥を行い可能な限り循環量を増加させ、きるだけ早く抑留離脱流体を送入する必要がある。また、逸泥掘削時は、スタビライザーを少なくする等の抑留されにくい掘削編成とする。
4)ゲージ落ちによる抑留
ゲージ落ちによる抑留は、摩耗したビットやスタビライザーで掘削した坑径が小さくなった区間に、新しいビットやスタビライザーを降下することにより、せり込んだ状態になることで発生する。図16にゲージ落ち抑留を示す。また、傾斜方位を大きく変化させた個所にタイトな沿角編成を降下すると、編成が湾曲しにくいことから地層にせり込むことがある。
新しいビットやスタビライザーの降下やタイトな沿角編成の降下時は、下げ荷重の変化に注意し、負荷がある場合は早めに浚渫をおこなう。抑留が発生した場合は、強引と打ち上げをおこない、できるだけ早く抑留離脱流体を送入する。
5)セメントによる抑留
セメントによる抑留は、逸泥対策のセメンチングやプラグバックセメンチング時に、放置したセメントスラリーが計画より早く硬化または計画以上に上昇することが原因で発生する。また、セメントの硬化が計画より遅れ、セメント頭部を確認する編成が抑留されることもある。
セメントスラリーによる抑留は、循環が可能な場合は抑留離脱流体を送入し強引をおこない、循環ができない場合はバックオフしか対策がないことが多い。
6)抑留離脱流体スポット
抑留離脱流体スポットは、抑留されているドリルストリング周辺を特殊流体で満たし、ストリングスと坑壁間の摩擦を小さくするとともに、泥壁やカッティングスの堆積物を分散させることにより、抑留ストリングを離脱させる方法である。軽油に油性の浸透剤・潤滑剤を添加したオイルスポット流体は、離脱効果は大きいが、油分による環境汚染が考慮されるときは非油性系抑留離脱流体を使用する。表1に抑留離脱流体組成例を示す。
【参考文献】