ここ数年、役所の資料では「地域と共生した再生可能エネルギーの大量導入」という言葉がよく使われているが、その意味がどうもその言葉から一般の人が受ける印象・理解とは異なっているようなので、その点について考えてみることにする。
まず、「地域と共生した再生可能エネルギー」という言葉から素直に思い浮かぶいくつかの事例を挙げてみる。
このほか、我々のごく身近にあるものとしては家庭から出るごみの焼却施設における発電(ごみの中にプラスチックなども含まれているので全部ではないが)も一部がバイオマス発電と言え、その排熱を使った温水プールや植物園なども地域の住民に喜ばれている。
地域の農業や林業との共生、あるいは都市部での廃棄物処理との共生といったものが多い。平成30年4月に閣議決定された第5次環境基本計画において提唱された「地域循環共生圏」のイメージとも合っていて、こうしたものが大量に導入できるのであれば、みな大歓迎である。
しかし、令和3年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画においては、地域と共生する形で大量に導入するものは太陽光と風力であるとされている。上記の事例のイメージとはだいぶ異なっており、どういうことか考える必要がある。
言葉の遊びのようで恐縮ではあるが、次のように考えると腑に落ちるところである。
まず、「地域と共生した再生可能エネルギーの大量導入」という言葉から一般の人のイメージするところは、上述のように、「地域と共生した再生可能エネルギー」を大量に導入するということになる。しかし、エネルギー基本計画の策定に携わる人は、2050年のカーボンニュートラルに向けた課題としてまず「再生可能エネルギーの大量導入」があるので、それを地域と共生した形で進めたいと言っているのである。つまり、「地域と共生した」という修飾語は、「再生可能エネルギー」を修飾しているのではなく、「大量導入」もしくは「再生可能エネルギーの大量導入」という言葉全体を修飾しているのである。エネルギー基本計画では、「地域と共生する形での適地の確保」、「適切なコミュニケーションの確保や環境配慮、関係法令の遵守等を通じた地域との共生」といったことが言われており、整理して言い直せば、「適切なコミュニケーションの確保や環境配慮、関係法令の遵守等を通じて適地を確保」し、太陽光や風力の大量導入を実現したいということである。「地域共生」を考える立場から見れば、言わずもがなの前提を言っているにすぎないということになる。
ただ、エネルギー基本計画もそれだけでよいと思っているわけではないようで、別の項で「地域と共生しつつ地域の活性化にも貢献する地産地消の取り組み」として「地域における地産地消による効率的なエネルギー利用、レジリエンス強化等にも資するマイクログリッドを含む自立・分散型のエネルギーシステムの構築」を提唱し推進しようとしている。
また、環境省の温対法に基づく地域脱炭素化促進事業制度においても、促進地域の設定に際しては、地域の経済活性化や地域課題の解決に貢献する取り組みを併せて求めることとしており、こうした取り組みの下でより高度な地域共生が実現していくことが期待されるところである。(「地域共生型再生可能エネルギー事業顕彰」の項参照)。
【参考資料】