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太陽光発電設備ケーブル盗難対策について

銅の取引相場が高止まりし、売却狙いの犯罪が再生可能エネルギー関連産業を脅かしています。

各地で太陽光発電施設から銅線が盗まれる事件が発生しています。2023年に銅窃盗被害件数が過去最大となりました。急増の背景には近年の世界的な銅の価格高騰があります。非鉄金属大手のJX金属によると銅の月間平均価格は2020年5月に1キロ604円でしたが2021年3月からは1,000円を超え続けています。2024年5月には1,643円となり2.7倍の値となりました。また、もうひとつの要因として、太陽光発電施設が人目に付かない山間部などに設置されていることも挙げられます。

2017年の改正FIT法で、太陽光発電所にフェンス・施錠・看板の設置が義務化されました。しかしながら、策定後も盗難被害は増加の一途を辿っています。金属盗難被害の半数は太陽光発電設備で発生しており、2022年10月から2023年10月にかけて発生件数は約1.6倍、ある県ではては約9倍に増加しています。被害にあった施設では、フェンスの設置や施錠など改正FIT法に沿った運営をしており、ガイドライン記載の対策だけでは不十分なことがうかがえます。

それでは、どのような対策ができるのでしょうか?対策案を紹介します。

  • ① 物理的にケーブルを切断できないようにする金属製プロテクターの設置
    太陽光発電設備の銅線ケーブル盗難対策として、泥棒が物理的に銅線ケーブルを切断・窃盗できないように銅線ケーブル全体を覆い、保護するプロテクターが開発され、2024年7月初旬より販売が開始されました。泥棒が窃盗の際に使用する業務用のハサミなどでケーブルを切断できなくすることで、窃盗の脅威を大幅に低減できます。また、非常にシンプルな設計で、施工も簡単にできるため、導入コストも安価となっています。
  • ② 銅製ケーブルからアルミ製ケーブルへの切り替え
    アルミ製のケーブルは、銅導体ケーブルに比べて転売価格が安い上に、転売数が少ない傾向があります。よって、窃盗団を捕捉する手がかりにもなりやすいため、アルミ製ケーブルの使用は、盗難防止効果が期待できます。また、銅導体ケーブルで復旧した場合は、同一の発電所が再び盗難の被害に遭う危険があるため、再犯を防ぐ効果も期待できます。

その他にも、侵入者を防ぐ堅牢なフェンスの設置や防犯カメラ(24時間監視システム)の導入などの対策がありますが、いずれもどれかだけを実施すれば大丈夫というものはありません。盗難被害を防ぐために複合的に対策を実施することが必要です。

全国で太陽光発電の銅線ケーブル盗難がますます増加傾向にあることを踏まえ、太陽光発電協会(JPEA)が7月2日、発電事業者や保守点検などの関係事業者に向けて、改めてケーブル盗難注意喚起のパンフレットをホームページへ掲載しました。

ケーブル盗難注意喚起のパンフレット (出典:太陽光発電協会) ケーブル盗難注意喚起のパンフレット (出典:太陽光発電協会)
ケーブル盗難注意喚起のパンフレット (出典:太陽光発電協会)

太陽光発電事業者にとっての抜本的な対応が難しい中、近隣の方々との治安協力・地域共生の推進や、定期見回りなどで効果を上げているケースもあります。太陽光発電設備のケーブル盗難対応については、より注意を払って、社会のエネルギーインフラとしての役割を果たすべく、活躍していただきたいと思います。

【参考資料】

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