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電力市場の概要(その6)―新たな電力市場(需給調整市場)―

【市場創設の背景】
一般送配電事業者は、これまで自らが周波数維持義務等を果たすため必要な調整力を2016年以降公募により調達していた。そのような中、再生可能エネルギーの導入が進み特に太陽光発電や風力などの変動電源に対する調整力の重要性が高まってきている。安定供給を実現する上で欠かせない調整力を、エリアを超えて低廉かつ安定的に確保すべく、調整力の広域的な調達・運用を行うことを目的として需給調整市場を2021年度から開設することとしている。

【需給調整市場の概要】
需給調整市場については、2021年度~2014年度と段階的に各調整力を市場で調達できるように現在制度設計中であるが、その主な内容を示すと以下の通りである。

  • (1)主な取引主体
    売り手は発電事業者及びアグリゲータ、買い手は一般送配電事業者
  • (2)商品の形態、取引
    • ●「実需給時点で時間帯毎に必要な能力を持った電源等を、出力を調整できる状態であらかじめ確保すること」をΔkWとして取引し契約する。
    • ●一般送配電事業者は、必要な能力を持った調整電源を必要な時に指令できる権利を持つことに対して発電事業者に対価を払う。また、実際に調整を行った場合の電力量(kWh)に対しても対価を払う。
  • (3)オークション方式
    選択したリソースから市場へ供出し、ΔkWの入札単価の安いものから約定される。
    (マルチプライスオークション)
  • (4)調整力を提供するリソース
    発電機(火力、水力、再エネ、自家発)、蓄電池、負荷設備(需要家所有の電気設備)
  • (5)商品メニュー
    • ●各商品メニューについては、現在、制度設計中であるが、調整力として活用する電源の考え方としては、「周波数を制御する一次調整力」「周波数を基準に回復させる二次調整力」「需給バランスを調整する三次調整力」がある。
    • ●上記調整力は、指令値までの出力変化(応動時間)が速く、出力継続時間が短い順に一次調整力、二次調整力①、二次調整力②、三次調整力①、三次調整力②分けられている。
    • ●現在、2021年度から三次調整力②【注記1】の広域調達が開始され、その後順次広域調達の対象が拡大される予定である。

    【注記1】
    FIT特例制度によって発生する再エネ予測誤差については、前々日からGCまでの再エネ予測誤差を三次調整力②で対応する事象としている。このような誤差については、応動時間が長い調整力で対応できることから、新規参入者による価格低減を期待し三次調整力②を商品として設けている。

  • (6)主な課題について
    現状、制度設計中のため動向を注視することが必要である。なお、特に気になる点としては、国の委員会等でも審議中であるが次の通りである。
    • ●市場支配力の行使を防止するための方策
      多くのリソース(発電分野)を旧一般電気事業者等が保有しているため市場支配力の行使を防止するための方策(ΔkW価格の登録価格に一定の規律を設ける等)の検討
    • ●電力市場の監視
      これだけ多くの市場(卸電力市場、ベースロード市場、容量市場、非化石価値取引市場、需給調整市場)が短期間で創設・運用されていくことについて、果たして期待通りに機能するか、相互に過不足なく調和するかどうか等懸念されるところであり、電力市場全体を俯瞰的に監視する在り方についての検討
需給調整市場のイメージ
(電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会2020.10.13配布資料より抜粋)
需給調整市場における商品の要件
(電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会第2次中間とりまとめ2019.7より抜粋)
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