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洋上風力について(その4)―業界の動きについて―

洋上風力の事業者選定結果(ラウンド1と呼ぶ)を踏まえて、洋上風力について(3)では、国の動きについて紹介したが、今回は業界(一般社団法人日本風力発電協会:JWPAと呼ぶ)の意見について紹介する。JWPAは、「洋上風力発電事業者の選定について(2021 年 12 月 24 日経済産業省・国土交通省同時発 表)」を踏まえた今後の公募に向けて(提言)」注記1をホームページに掲載(2022.2.22)し、関連する省庁に提出、説明を行った。
注記1:提言の詳細については、JWPAホームページ(https://jwpa.jp/information/6257/)を参照のこと

業界内注記2に事業者選定結果に関する疑問や懸念が多いことを理由に、評価の経緯やポイントなどについて、可能な限り詳しく公表・開示することや評価点の配分などの見直しを提言しており、早期の議論着手とラウンド2からの見直しを要望している。ここでは提言の概要について紹介する。
注記2:JWPAは、洋上風力事業の最大の当事者であり、専門事業者、メーカー、建設事業者等に加えて旧一電や商社、外資の大規模事業者も加入している。
なお、ラウンド1で落札した三菱商事エナジー・ソリューションズ及びシーテックも会員となっている。

【業界内の疑問や懸念について】
JWPAの会員企業などから寄せられた代表的な声として以下を紹介している。

  • ①発表されたのは評価結果の点数だけであり、評価がどのように行われたのか不明。
  • ②運転開始予定時期の遅い案件が選定された。運転開始予定時期は評価の対象になっていたのか。
  • ③価格点が圧倒的な比重を占めた。地元との協調・共生という発電事業の実施に重要な点を軽視する結果になりかねない。価格さえ安ければ落札できると言った誤ったメッセージを関係者や業界に与える結果となっている。
  • ④選定事業者の価格は圧倒的に低い価格で、日本には基盤が整っていない関連産業の採用・育成やサプライチェーン構築に支障を来たすと懸念。
    これらの疑問や懸念については、洋上風力について(3)でも同じような内容を紹介しているが、結果的には今後の洋上風力への参入意欲が減退しかねないとの危機感のあらわれと思われる。

【今後の公募にむけて】
JWPAの会員企業などから寄せられた代表的な声として以下を紹介している。

  • ①適切な情報開示
    特に、事業の実現性に関する「確認の視点と確認方法に基づいた講評」の開示
    洋上風力関連事業者および地元利害関係者が結果をどのように受け止めているかを詳細に把握し、今後の公募の遂行や新たな案件の形成に役立てるべき。
  • ②価格点と事業実現性の評価点の配分
    価格点と事業実現性の評価点の配分の見直しの考え方として次の3案を示している。
    • (案1)「最低入札価格」を「評価後最低価格」に
      入札価格に対し、事業実現性に関する評価における重要な要素(例:運転 開始予定時期等)を反映した価格(評価後最低価格)で評価を行うこと等
    • (案2)価格 120 点、事業実現性 120 点の配点
      価格と事業実現性の配点については、セントラル方式が公募に適用されるまでは実質的に 1:1 を確保すること。また、事業実現性に関する得点は各項目の総和とせず、各項目の総和の最多得点者が満点(120 点)を獲得できることとする。
    • (案3)事業実現性についての評価の手順
      例えば、地元利害関係者が協調・共生の観点から複数の者 (3~4 応募者)を選び(ショートリスト)、その選ばれた者の応募計画における事業 実現性の評価・採点を行い、価格点と合算する。
    特に、(案1)は、価格と事業実現性は、それぞれ独立して評価することは難しい。従って、それぞれの要素を織り込んだ価格で再評価し、「評価後最低価格」として認定しようとするものである。

本件については、経済産業省と国土交通省より、「公募の在り方を議論し、その結論を審査基準に反映する。そのため、現在公募している案件について公募の実施スケジュールを見直す」と発表された。現状、洋上風力発電の公募制度見直しの議論が進んでおり、今後の議論の推移に注目したい。

洋上風力公募の評価基準 (再掲)
(海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域 公募占用指針 R2.11をもとに作成)
洋上風力公募の評価基準
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