洋上風力について(その9)で述べている通り、内閣府は「EEZにおける洋上風力発電の実施に係わる国際法上の諸課題に関する検討会」を立ち上げ、R4.10.6から4回にわたり検討会を開催しており、R5.1.31にとりまとめ結果を公表した。
https://www8.cao.go.jp/ocean/policies/energy/pdf/torimatome.pdf 参照
検討会は、内閣府総合海洋政策推進事務局長の私的懇談会の形で、EEZ における洋上風力発電の実施に関して、国連海洋法条約(以下「UNCLOS」 という。)との整合性を中心に、国際法上の諸課題に関し以下の論点について検討している。
検討結果によると「国内法上必要な手続きを規定すれば、沿岸国はEEZ において洋上風力発電事業に係る建設、運転、メンテナンスなどを行える」との考え方を示している。各論点についての考え方についての概要を紹介する。
論点①については、「洋上風力発電は、特定の場所に固定されるためUNCLOS における「施設及び構築物」と位置付けることが適当と考えられる」
論点②については、「国内法上必要な手続きを規定すれば、沿岸国は EEZ において認められた主権的権・管轄権の行使の一環として、建設、利用時のメンテナンス、解体 の各段階にわたって、洋上風力発電事業に係る探査及び開発のための活動や 占用等の許可、監督処分、報告の徴収、立入検査などを行うことができると考えられる」
論点③については、「我が国 EEZ において洋上風力発電施設の周囲に安全水域を設定する必要がある場合、「安全水域法」に基づき安全水域を設定することができる」
論点④については、「航行の自由との関係では、洋上風力発電施設を設置する際のその位置について海図への記載等を行うことに加え、安全水域を設定する際のその位置及び範囲について告示等を行うことをもって、妥当な考慮を果たしたといえると考えられる」
論点⑤については、「国際社会での議論や他国の国家実行等を踏まえながら、洋上風力に係る環境影響評価制度のあり方の検討を踏まえた所要の国内的措置を講じた上で国内法令を適用して対応する必要があると考えられる」
論点⑥については、「EEZ における洋上風力発電に関し、他国の国家実行等も踏まえながら、事前通報等の要否やその範囲を政府において適切に判断する必要がある」
既に、海外では領海外での洋上風力の開発を進めており、上記検討会の資料によれば計画中、建設中、運転中の案件は100件を超えている状況にある。我が国 EEZ における洋上風力発電については、各国の状況も参考にしながら、政府において今後の制度設計を検討していくことが必要と考える。