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アンモニア発電

アンモニア発電とは、その名の通り、アンモニアを燃料とした発電方式です。アンモニアは燃やしても二酸化炭素を排出しないことから、現在、発電の燃料として使われている石炭や天然ガスと置き換えることで、大幅な二酸化炭素の排出削減が期待されています。

アンモニア発電が注目を集めているのは、以下のようなメリットがあるからです。

  • 発電時にCO₂を排出しない
  • 水素と比べて運搬が容易で、コストが安い
  • 既存施設を有効活用できる

従来アンモニアは化石燃料を原料にして製造されてきましたが、近年では太陽光などの再生可能エネルギーを用いて製造する試みも進んでいます。もしこれが実用化できれば、アンモニアはカーボンフリー燃料となります。

【課題】

アンモニアを燃料にした発電技術の開発には課題も多くあります。たとえば、アンモニアは都市ガスの主成分であるメタンなど他の炭化水素系燃料と比較すると、炎を良い状態で安定させる保炎範囲がとても狭く、また、燃焼速度も非常に遅く、メタンのわずか5分の1に過ぎません。このような要因からアンモニアの燃焼性は低く、着火および保炎が難しいのです。

こうした状況を打開したのは、東北大学 小林教授らの「スワール流」に関する研究です。バーナーの回転速度を変えるなどして燃焼器内の気体の渦流の大きさや巻き方を変えたところ、気体状態にあるアンモニアの渦状の流れを制御することで効率的に空気と触れさせ、安定的に燃焼を持続させることに成功しました。このような研究を通して、アンモニアを持続的に燃焼させることが可能となり、アンモニア発電が現実的な選択肢として名乗りを上げることになりました。

【開発状況】

開発された燃焼技術でアンモニアを直接燃焼させ、発生する高温高圧のガスでタービンを回せば、実際に発電することができます。世界初のアンモニア燃料発電は2014 年8月、最大出力50 kWのガスタービン発電装置を用いて実現しました。さらに、熱量比灯油70 %、アンモニア30 %の条件で燃焼させたところ、21 kWの安定した発電出力を維持することに成功しました。

そして、2015年9月には、メタンとアンモニアの混合気体、さらに燃料をアンモニア100 %にしたガスタービン発電にも成功しています。発電出力はいずれの場合も41.8 kWに達し、これによりアンモニアを火力発電用燃料として利用できる可能性が示されました。ガスタービン発電についてはさらに大型化を進め、2018年3月には2MW発電に達しました。

最近ではガスタービン発電と並行して、石炭火力発電への展開が進められています。石炭火力発電にアンモニアを大量導入できれば、二酸化炭素の削減効果が期待できます。そこでアンモニアと微粉炭を混合燃焼する実証試験が行われ、世界最高水準となる熱量比率20%のアンモニア混焼に成功しました。この結果から、石炭火力発電所の燃料としてアンモニアを利用できる燃焼技術の実用化の目途を立てることができました。

東京電力グループと中部電力の合弁会社であるJERAは、アンモニア混燃方式をいち早く取り入れ、2024年には愛知県碧南市の碧南火力発電所にて、アンモニア20%の混燃実証を目指すと発表しました。

さらには、「水素」の代わりにアンモニアを用いた「燃料電池」の研究も進められています。燃料電池には大規模な設備が必要ないため、将来的にはアンモニアを用いた燃料電池車や家庭用発電システムが開発されることが期待されます。

※参考資料

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