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「液体空気」で低コストに蓄電する技術(液化空気エネルギー貯蔵システム)

再生可能エネルギーの多くが天候や自然条件に左右されるため、再エネを大量に導入するには、需要と供給のバランスをとるために、エネルギーを貯める技術が不可欠である。現状では、リチウムイオン電池などの蓄電池が主流で使用されているが、寿命が10年程度と短く、長期間で考えると高コストになっている。

そこで、今注目されているのが、再エネの電気を「液体空気」で蓄える技術(液化空気エネルギー貯蔵技術)。これは、住友重機械工業株式会社が、46百万米ドルの出資を行った英国のハイビューエンタープライズリミテッドが手掛けるもので、液化空気の形でエネルギーを貯蔵し、必要なときに電力として取り出す技術。仕組みは、二酸化炭素と水蒸気を取り除いた空気を、マイナス190℃まで冷却して液化し、断熱されたタンクに保存、その液化空気を再度気化させる際の膨張エネルギーを利用してタービンと発電機を駆動し、電力に戻すというもの。その際の空気の相変化過程で生ずる冷熱と温熱を再利用することで、全体のエネルギー変換効率を上げている。商用施設を2024年内にイギリスに建設する予定で、蓄電能力は30万kWhで日本の70世帯が1年間に使用する電力に相当する規模になる。建設費用は150億円で同規模のリチウムイオン電池施設よりも割高になるが、耐用年数が40年と長いため、長期間で考えると割安となる。試算では、1kWhの蓄電コストは110ユーロでリチウムイオン電池よりも6割程度安い。

液化空気エネルギー貯蔵システム

圧縮空気にすると、体積は気体の300分の1になるため、施設の建設用地が限られる都市部でも導入が可能。

電気から電気への変換効率は、55~60%で、蓄電池の70~80%には劣るが、空気の相変化過程で生ずる冷熱と温熱を再利用することで効率を上げる取り組みが行なわれている。

日本国内でも2022年に試験施設の建設を開始し、2024年に稼働する計画。

再エネのさらなる導入拡大のために、安価な蓄電技術の開発に取り組むことには大きな意義がある。今後の開発状況に期待したい。

【参考資料】

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