新エネルギー「最近の話題・キーワード」解説コーナ-新エネルギー「最近の話題・キーワード」解説コーナ-

GXリーグの排出量取引制度について

令和5年2月10日に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」に沿って、GX推進法案が国会に提出された(別稿参照)が、同法案には含まれていない企業の自主的な取り組みとしてのGXリーグによる排出量取引制度(GX-ETS)についても並行して準備が進んでいるのでそれについて解説する。

GX-ETSについては、昨年の9月から学識有識者による検討会を行いつつ、並行して賛同企業への説明と意見交換を進めて、去る2月1日に「GX-ETSにおける第1フェーズのルール」が事務局から公表され、また2月14日のGXリーグシンポジウム2023でその概要の説明が行われた(ただし、最終的な「規程」等については引き続き議論し検討していくとのこと)。

  • (1)目標の設定
    参加者は、まずは「削減」にあたっての基準年度を決める必要があり、原則は2013年度とすることが推奨されている。個々の企業の状況により2014~2021年度から基準年度を決めてもよいが、2021年度の直接排出量が10万t-CO2e以上の企業(グループG)の場合は、基準とする年度を含む連続した3年度の平均排出量を使うこととされている。それ以下の企業(グループX)は単年度でもよい。そのうえで、
    • ①2030年度排出削減目標
    • ②2025年度排出削減目標
    • ③2023~2025年度(この期間が第1フェーズ)の排出削減量総計の目標
    を決める。国内直接排出と国内間接排出(外部から調達する電力や熱からの排出量も含めたもの)について設定。目標はそれぞれの企業で設定するが、併せてカーボンニュートラルに向けた戦略、具体的な施策等についての説明が求められる(その公表については検討中)。
  • (2)実績報告
    実績報告については毎年度毎に翌年度の10月末までに行うこととされている。グループGの企業については、排出量の算定結果について第三者の検証を受ける必要がある。
    具体的な算定方法等については、温対法に基づく温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(SHK制度)等を基礎にして行うこととされている。
  • (3)排出量取引
    上記(1)、(2)のプロセスを経て、第1フェーズが終了したところで、結果についての評価が行われ、必要により排出量取引となるが、その際、キーとなる指標は第1フェーズ期間の国内の直接排出に係る削減量の総計である。そして参加企業が自ら掲げた目標とともに重要な指標になるのが、国が定めた「2030年度でマイナス46%」という目標(NDC目標)である。この制度では、企業が自ら定めた削減目標を達成すれば、もちろん達成と評価されるが、未達の場合であってもNDC水準(第1フェーズ期間では平均マイナス29,7%)以上の削減になっていれば、達成評価となる(超過削減枠も創出)。逆に自主削減目標を上回って超過達成していても、その水準がNDC水準に届いていない場合には、売却可能な超過削減枠の創出は認められない。
    自主削減目標が未達であった企業は、次の3通りの対応を取ることができる。
    • イ)本制度により創出された超過削減枠を購入する。
    • ロ)適格カーボンクレジット(J-クレジット及びJCMクレジット)を購入する(ただし、JCMについては、現状ではパリ協定の中の国際ルールとして検討途上)。
    • ハ)未達理由を説明
    また、超過削減枠の創出については、上記の直接排出に係るNDC水準のクリア要件に加えて、間接排出を含む総排出が制度開始前の排出実績を下回っていることとの要件も課せられる。そして、超過削減枠の創出は、実績報告とは別にGXリーグ事務局に創出申し込みを行い、その確認を経てGXリーグ事務局から付与されることとなっている。
  • (4)レビュー
    目標達成状況及び取引状況は情報開示プラットフォーム「GXダッシュボード」上で公表される。ダッシュボードの在り方については、引き続き賛同企業との間で検討。

以上GX-ETSについて概要を説明した。上記「第1フェーズのルール」はA4で80ページにのぼる大部なものであり、さらに最後の8ページは超過削減枠の取り扱いにかかる残る論点となっている。法務、会計、税務等引き続き検討すべき課題は多く、関係者の奮闘が期待される。

【参考資料】

  • ・R5.2.14 GXリーグシンポジウム2023資料「GX-ETSの概要」
  • ・R5.2.1  GXリーグ事務局発表「GX-ETSにおける第1フェーズのルール」
ページトップへ