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GX推進法案の概要について

昨年12月22日のGX実行会議において取りまとめられた「GX実現に向けた基本方針」(別稿にて解説済み。この基本方針についてはその後パブリックコメントの手続きを経て文言の一部修正を行った上、2月10日に閣議決定された。)を具体化するための「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案」(略称:GX推進法案)が2月10日に閣議決定され、国会に提出された。同法案の概要について報告する。

  • 1.脱炭素成長型経済構造移行推進戦略(GX推進戦略)の策定(第6条)
    本法に基づき実施する事業の全体計画づくりである。原案の作成は経済産業大臣が行い、財務大臣、環境大臣等と協議をしたうえで閣議決定するとしている。
  • 2.GX経済移行債の発行(第7条)と償還(第8条)
    国の財政規律を定めた財政法の定めにかかわらず、GX経済構造への移行を推進するための施策に充てるため、エネルギー対策特別会計の負担において公債を発行することができる旨規定。期間は令和5年度から10年間と法文上明記。経済産業省が作成した法案の説明資料には10年間で20兆円規模と書かれているが、これは上記「基本方針」に書かれている内容で、法文上は「各年度の予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内」と規定されている。そして償還については次に述べる化石燃料賦課金と特定事業者負担金の収入により令和32年度までに償還するとされている。
  • 3.化石燃料賦課金(第11条~第14条)
    令和10年度から、経済産業大臣は、化石燃料の輸入事業者等から、輸入等する化石燃料に由来するCO2の排出量に応じて化石燃料賦課金を徴収する。上記2.のGX経済移行債の発行開始から5年遅れでの徴収開始としている。さらに産業界への過度な負担を避けるため、徴収額に上限を設ける配慮が法文上に施されている。上記「基本方針」に記載されている産業界への配慮をきちんと反映させているという意味では評価できるが、他方、現状でも石油石炭税においては既に環境税の性格を加味しCO2の排出量に応じた上乗せ課税を行っており、また再エネ特別措置法により再エネ電気の普及のための納付金を徴収していることを考えれば、更なる上乗せとなる本件賦課金は既に課している負担が減った範囲内で徴収するということは当然のことかもしれない。
  • 4.特定事業者負担金(第15条~第19条)
    令和15年度から、経済産業大臣は発電事業者に対してCO2の排出枠(量)を有償又は無償で割り当てることとし、その有償で割り当てる部分を獲得した者が特定事業者負担金を納付することとする。その有償部分の割り当てについては入札により行うとされている。いわゆる排出量取引の一形態である。なお、上記「基本方針」では、排出量取引について、鉄鋼、化学、自動車、電機等の広範な産業を巻き込んだGXリーグでの排出量取引も盛り込んでいるが、これについては産業界の自主的な取り組みとして始めるとされているため、本法律案には書かれていない。
  • 5.脱炭素成長型経済構造移行推進機構(GX推進機構)(第20条~第72条)
    経済産業大臣の認可により、GX推進機構を設立。経済産業大臣の委託により上記の化石燃料賦課金及び特定事業者負担金の徴収、特定事業者排出枠の割り当て及び入札の実施を行わせるほか、GX経済への移行のための投資を行おうとする事業者への債務保証等の支援等を行う。機構の設立手続きからはじまり、運営体制、事業計画の認可、業務の監督等について詳細な規定が置かれている。
  • 6.その他
    この法律は公布の日から3か月以内の政令で定める日から施行されるとされている。通常の法律の場合、法律の公布後の実施に当たっての細部は政省令で定めるとして行政にゆだねられるが、長長期にわたる重要な取り組みを規定する本法律案では、上記3.の化石燃料賦課金と4.の特定事業者負担金(排出枠の割り当て及び入札に関することを含む)については、改めて別の法律によりその実施を具体化すると規定されている(第14条及び第19条)。そして、その詳細な制度設計については、本法律の施行後2年以内に法制上の措置を行う旨が附則において規定されている。

国会における審議を経て、本法律案による施策が有効に機能していくことを期待したい。

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