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JR九州×住友商事グループによる共同事業「でんきの駅川尻」の完工について

2050年のカーボンニュートラル実現に向け、再生可能エネルギー(再エネ)の大量導入を見据えた電力ネットワークの安定化・次世代化は不可欠な状況です。しかしながら、再エネは、日照・風などの自然条件によって発電量が大きく変化するため、電力系統に大量に接続すると、電力の安定供給が難しくなってしまう恐れがあります。そこで、今後、再エネの普及・拡大の鍵を握るソリューションとして、電力を安定供給し、需給バランスを調整する蓄電池の役割がますます重要になっていきます。特に、太陽光発電を中心に再エネ導入量の多い九州地域では、その役割が重要となります。

この度、九州旅客鉄道株式会社、住友商事株式会社、住友商事九州株式会社は、九州エリアにおいて、蓄電事業を運営する「でんきの駅合同会社」の合弁契約を締結しました。

「でんきの駅」では、JR九州が管理する鉄道沿線地・遊休地を有効活用し、JR九州の保守管理ノウハウと住友商事グループの蓄電事業ノウハウを生かして系統用蓄電事業を実施する計画で、熊本県熊本市に、第1号案件「でんきの駅川尻」を完工しました。「でんきの駅川尻」では、鉄道沿線地特有の土地形状に合わせた専用設計の「バッテリー・ステーション」システムを構築しています。また、蓄電池は、住友商事と日産自動車との合弁会社であるフォーアールエナジー株式会社が提供するEVバッテリーのリユースを、定置用(電力事業用)として活用できるように、経済的価値の高い設計でシステム化した「EVバッテリー・ステーション」を採用しています。今後、設備の本格稼働に向け、各種試験を行った後、系統用蓄電池として需給調整市場および容量市場に参入し、電力安定化を通じて九州エリア全域の再エネ普及に貢献する予定です。

【「でんきの駅川尻」設備概要】
  • 場所:熊本県熊本市南区川尻(鹿児島本線川尻駅 九州新幹線高架脇)
  • 事業者:でんきの駅合同会社
  • 完工日:2024年3月21日
  • 事業開始:2024年9月(予定)
  • 定格出力:1.5メガワット
  • 実効容量:6.0メガワット時
「でんきの駅川尻」外観
「でんきの駅川尻」外観
「でんきの駅川尻」内部
「でんきの駅川尻」内部

また、JR九州、住友商事、住友商事九州は、2024年2月7日に熊本市とカーボンニュートラルの実現に向けた連携協定を締結しており、今後、「でんきの駅川尻」を皮切りに、熊本市内において事業を展開しながら、JR九州のネットワークと住友商事グループの蓄電事業に係るノウハウを生かし、九州エリア全体の鉄道沿線地・遊休地などで事業拡大を進める予定です。さらに、「でんきの駅」をプラットフォームとして、災害時には蓄電池の電力を開放するなど、地域に安全・安心を提供する地域エネルギーサービスを検討しています。

企業がそのメリットを活かして協業し、さらに自治体を巻き込んで、地域の再生可能エネルギー拡大の課題を解決し、一層の普及に繋げる今回の取り組みは先駆的であり、引き続き今後の動向に期待したい。

【参考資料】

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