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「ブロック」を使った低コストに蓄電する技術(重力式エネルギー貯蔵システム)

天候や自然条件に左右される再生可能エネルギーにとって、エネルギーを貯める技術が不可欠ことは、先月の「液体空気で低コストに蓄電する技術」でお話しした通りである。

そこで、今注目されているもう一つの発電方法が、夜間等の安い電気で「ブロック」を持ち上げておき、電気が必要な時にそれを落として発電するという重力式エネルギー貯蔵システム。ソフトバンクグループやサウジアラビア国営石油会社が出資するスイスのエナジー・ボールドが開発している。水力発電の揚水発電に似ており、揚水発電が夜間電力で「水」を上池に貯めて電気を蓄える代わりに、重力式エネルギー貯蔵システムではクレーンで「ブロック」を持ち上げ、高い位置に積み上げることで電気を蓄えるもの。

圧縮水素トレーラー

高さ100m以上の塔を使用し、中央に据えられた特別なクレーンは6本のアームで土や灰、廃棄物などで作られた1つ35トンの「ブロック」を高い位置に積み上げる。使用するエネルギーは再エネで、クレーンは特別なソフトウェアで全自動操作される。風などの影響要因も考慮されている。

電気が必要な際にはその「ブロック」を落下させ、その勢いでモーターを回転させて発電する。発電効率は揚水発電の70%に対して、80%程度にもなる。コストはリチウムイオン電池の半分程度。

試算では、120mの塔で約6000個の「ブロック」を使用すれば、35,000kWhが蓄電できる。これは2~3,000世帯に8時間分の電力に相当する。建設費用は800万~900万フラン(約9~10億円)。

コンテナ倉庫のような次世代型も開発され、数百万kWhという高容量のものも実現できる。2022年5月には中国・江蘇省で10万kWhの施設の建設が開始されている。

再エネのさらなる導入拡大のために、安価な蓄電技術の開発に取り組むことには大いに意義がある。今後の開発状況に期待したい。

【参考資料】

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