令和5年4月25日に経済産業省から風力発電の風車の点検について検討をお願いするニュースリリースが出されたので、その重要性に鑑み本コーナーでもその概要について紹介する。
本件ニュースリリースの契機となったのは、令和5年3月17日に青森県の六ケ所村風力発電所で発生した風車1基(ゼネラルエレクトリック社製 GE1,5s 2003年11月運転開始)の倒壊事故である。設置者からの報告によると倒壊した風車はタワーの溶接部において破断が生じていて、破断面を観察すると広範囲にわたって内外面を貫通する疲労亀裂(推定)や外面の発錆、内面の塗装割れが確認されているとのことである。
ニュースリリースでは、設置者である日本風力開発ジョイントファンド(株)において事故調査委員会を立ち上げ、原因究明及び再発防止策の検討を進めているが、同社では並行して上記のような亀裂、発錆、塗装割れはタワー内外からの外観検査により発見できる可能性があるので、自社の同じ型式の風車について点検方法を公開(日本風力開発(株)のホームページ)しつつ、緊急点検を行っていることを紹介している。
日本風力開発(株)のホームページに掲載されている緊急点検方法の概要
さらに上記①~③に係る注意事項として、
等が示されている。
そして点検対象としては、保有するGE1,5s型式のものをすべて点検するが、倒壊したタワーを製造した(株)日本製鋼所が製造したタワーを使用している風車から優先して点検していくとしている。
経済産業省のニュ-スリリースでは、日本風力開発ジョイントファンド(株)の上記対応を紹介し、併せて経済産業省として倒壊した風車と同じ型式の風車の設置者には既に同様の事故の発生の可能性を念頭に、緊急点検を実施するよう要請していることを報告している。
そのうえで、今回のニュースリリースでは、他の型式の風車の設置者においても、「電気事業法施行規則第94条の3第1号及び第2号に定める定期自主検査の方法の解釈」(令和5年3月20日付で発出された新しい通達ではあるが、内容的には今回の事故以前に検討されていたものと思量される)や上記の日本風力開発ホームページの点検方法等を参考に、点検の実施の必要性について検討するようお願いしている。
規制当局による「必要性の検討のお願い」というのは、ある意味大変に珍しいところであるが、タワーの倒壊という重大事故の発生を受けて、事故原因の究明が始まったばかりという状況の中での緊急の対応としては適切な判断と思われるところであり、関係者の方々の積極的な対応が期待されるところである。
【参考資料】