送配電網の維持、運用に係る費用について、小売電気事業者が託送料金として全額負担してきたが、その一部について発電側に求める「発電側課金」(発電側基本料金をその後の進捗により発電側課金に名称変更)の導入をめぐって決着の方向性が見通せない状況となっている。最近の経緯を含めて現状について紹介する。
電取委の制度設計専門会合で審議されてきており、「発電側基本料金について(その4)」において述べているように、発電側課金としては、これまでのkW課金だけではなく、kW課金+kWh課金とした見直し案を提案している。これまでのkW課金だけでは、風力発電や太陽光発電といった設備利用率が低い電源が従来電源である火力発電に比べ不利となるものであったため、発電電力量を考慮した課金に見直した。
この発電側課金制度については、「発電側基本料金について(その3)」において述べているように、発電事業者の系統接続の初期負担抑制につながる一般負担の上限額の引上げ(発電事業者の負担分が軽減)とセットで2023年度の導入を目指していたが、発電側課金だけが先送りされてきた。
第6次エネルギー基本計画2021.10での記載では「発電側課金の円滑な導入に向けて、導入の要否を含めて引き続き検討を進める」とされており、発電側課金の導入については振り出しに戻った。2021.12.24に開催された第38回再エネ大量導入・次世代電力NW小委員会において「発電側課金を含めた送配電関連の費用回収の在り方については、2024年度を念頭にできる限り早期の実現に向けて検討を行い、2022年度中を目途に結論を得ることとしてはどうか」とされており、結論は1年見送りされた。
2022.4.21に開催された電取委の72回制度設計専門会合で、発電側課金については、「制度趣旨・効果は現在の エネルギー政策とも整合的であり、発電側課金の導入意義はあると考えている」と述べており、早期の導入が妥当との見解をまとめている。
発電側課金の導入をめぐっては、エネルギー基本計画において、再エネ目標が大幅に引上げられたこともあり、「再エネの普及にマイナスとなる発電側課金の導入は慎重に検討すべき」との意見や、一方で「系統接続時の初期負担の軽減が先行している中で、発電側課金だけが先送りされた場合、系統増強費用の確保に影響が出てくることが懸念される」との意見もある。
今後の国の会合で発電側課金の導入要否を含めた送配電関連費用回収の在り方が議論される見込みであり、今後の動きを注視していきたい。