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発電側課金について(その6)
―再エネ普及への配慮―

送配電網の維持、運用に係る費用について、これまで小売電気事業者が託送料金として全額負担してきたが、その一部について発電側に求める「発電側課金」(発電側基本料金をその後の進捗により発電側課金に名称変更、タイトル名も発電側課金とした)については、2024年4月の開始に向けてのルール(電取委制度設計専門部会 中間とりまとめ案2023.2.20を公表)がほぼ固まった。ここでは、「発電側課金」の概要について紹介する。

【発電側課金とは】

発電側課金は、系統を効率的に利用するとともに、再エネ導入拡大に向けた系統増強を効率的かつ確実に行うため、現在、小売事業者が全て負担している送配電設備の維持・拡充に必要な費用について、需要家とともに系統利用者である発電事業者に一部の負担を求め、より公平な費用負担とするもの。

【課金対象】

  • (1)発電側課金については、系統に接続し、かつ、系統側に逆潮させている電源全てを課金対象とすることを基本とする。ただし、系統側への逆潮が10kW未満(例:住宅用太陽光発電)と小規模な場合は、当分の間、課金対象外とする。
  • (2)発電側課金の導入が再エネの最大限の導入を妨げないよう、FIT電源等の取扱いについて、資源エネルギー庁の審議会において整理がなされた。
    • ・既認定FIT/FIP については、調達期間等が終了してから発電側課金の対象にするとのこと(認定期間中のみ対象外)
    • ・新規FIT/FIP については、調達価格等の算定において考慮(通常要する費用として認め交付金で賄う、全額かどうかは論点として残っている模様)

【課金方法】

発電側基本料金(その5)で解説している通り、kW課金(固定料金)とkWh課金(従量料金)の組み合わせで実施することが既に決まっており、kW課金とkWh課金の比率は1:1としている。

現行案と見直し案について
(電力・ガス取引監視等委員会 第54回 制度設計専門部会2021.1.25配布資料より抜粋)
現行案と見直し案について

(発電側課金の設定)

  • ・発電側・需要側の両方で等しく受益していると考えられる上位系統(基幹系統及び特別高圧系統)に係る固定費の一部(発電側と需要側の課金対象kWで按分したもの)を発電側課金で回収することとしている。
  • ・2015年度実績によると上記固定費(10社合計)は、1兆4208億円であり、発電側課金の規模のイメージとしては、年間約5333億円程度で託送料金の1割程度となる。

【割引制度】

発電側課金は、系統増強費用の確保を目的としているため、系統への影響が少ない立地地点の電源については割引を受けられるとしている。割引の規模は、地点によって異なるが系統増強の影響が少ないエリアに電源を誘導する狙いもある。

【参考】

FIT電源の買い取り期間が終了した場合の負担単価のイメージは以下の通りであり、従来と比べて設備利用率が低い電源の負担率は軽減している。費用負担のイメージとしては、例えば、風力発電の見直し後の負担単価は0.72円/kWhでありFIT調達価格(2022年度上限額16円/kWh)と比較すると総発電量の約4.5%以上を発電事業者が負担するイメージとなる。

FIT切れと同時に課金によってコストが増えることにより事業を継続しない事業者が増え、再エネ普及の妨げとならないよう配慮すべきと考える。

各再エネ電源における見直し前後の負担単価イメージ
(電力・ガス取引監視等委員会 第54回 制度設計専門部会2021.5.12配布資料より抜粋)
各再エネ電源における見直し前後の負担単価イメージ

発電側課金については、6次エネルギー基本計画(2021.10)において「導入の要否を含めて検討を進める」とされており、その導入について振り出しに戻ったが、ようやく導入時期を2024年度と定めるとともに課金制度の骨格が決まった。現在、中間とりまとめ(案)は、パブリックコメントを終え、経済産業大臣に建議することとなっている。

今後は、2024年度の開始に向けてルールの整備を行うとともに発電事業者への周知が徹底されることを期待したい。

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