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発電コスト検証結果について(その2)
―統合コストについて―

発電コスト検証結果について(その1)でも述べた通り、太陽光や風力といった自然変動型電源については統合コストとして系統安定化のための追加費用が発生する。2030年におけるエネルギー需給見通し(関連資料)(令和3年9月)によると発電電力量(9340億kWh)に占める太陽光と風力を合わせた発電電力量は約1885億kWh(20%)としている。発電コスト検証に関する報告(2021.9)によると、この場合の自然変動型電源に発生する追加費用は、年間1兆1580億円と試算されており、その考え方は次の通りである。

  • ①自然変動型電源は、気象条件によって出力が変動するため、変動に応じて火力発電や水力発電(揚水式)によるバックアップ等の調整を行うことが必要であり、この調整に伴う追加費用が発生する。
  • ②追加費用の内訳としては以下の通り。
    • ・火力発電の稼働率低下による発電効率悪化等に伴う費用
    • ・火力発電の停止及び起動回数の増加に伴う費用
    • ・揚水式水力の動力によって需要を創出することによる費用
    • ・火力発電設備等を自然変動型電源対応のために確保しておくために費用な費用

なお、地域間連系線等の増強費用やEVやDRに関する費用効果についてはこの追加費用には含まれていない。

自然変動型電源の統合コストによる増分は、自然変動型電源の発電電力量と追加発生費用から1kWh当たりで約6円程度となる。個別の電源についてどのような分担となるかについては、報告書に参考として示されており、高い順に太陽光(事業用)18.9円/kWh、風力(陸上)18.5円/kWh、原子力14.4円/kWh、石炭火力13.9円/kWh、ガス火力11.2円/kWhとなっており、統合コストを含まない発電コストと比べて順位が逆転しており、再エネが最も高くなっている。なお、統合コストについては、報告書にも述べられているが、「分析手法や結果の示し方については、電源別発電コストほど国際的に確立しておらず研究途上、このため他国の示し方も参考にしつつ委員有志が試算を行った」とされている。

統合コストについては、自然変動型電源だけではなく他の電源にもあり、再エネだけに過剰な統合コストを前提条件として盛り込めば、結果も過剰となることは容易に推測できる。重要なのは、報告書にも述べられているが、高いか、安いかではなく総合コストをどう抑制していくのか、誰がどう負担するのかなどについて議論を進めることと考える。

統合コストについて
(基本政策分科会に対する発電コスト検証に関する報告 2021.9より抜粋)
統合コストについて統合コストについて
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