バイオマス活用における注目技術・要素①
－ブラックペレット（その２）－

バイオマスとは、生物資源（bio）の量（mass）を示す概念であり、「動植物に由来する有機物である資源（化石資源を除く。）」であり、大気中の二酸化炭素を増加させない「カーボンニュートラル」と呼ばれる特性を有している。バイオマスを製品やエネルギーとして活用していくことは、農山漁村の活性化や地球温暖化の防止、循環型社会の形成といった我が国の抱える課題の解決に寄与するものであり、その活用の推進を加速化することが強く求められている。（農林水産省令和4年2月の「バイオマスの活用を巡る状況」より）

一方ご存知のように、政府発表では、「2050年カーボンニュートラル（2020年10月表明）」、「2030年度に2013年度比46％削減、更に50％の高みを目指す（2021年4月表明）」の実現に向けた道筋を示すことが重要テーマとして挙げられ、具体的には、2030年度エネルギー需給見通しとして、野心的目標で再エネの電源構成は36～38％（3,360～3,530億kWh）とされている。さらに、再エネの一翼を担うバイオマス発電は第5次エネルギー基本計画の3.7～4.6％（394～490億kWh）から、5％（470億kWh）への目標が掲げられている。さらに、バイオマス発電は太陽光発電や風力発電のように気象条件に左右されることはなく、再生可能エネルギー・慣性力・安定電源の観点でメリットがある。

前回、慣性力と安定電源の特性を持ったバイオマス発電の燃料として木質ペレットのうちブラックペレットと呼ばれる材料を活用したバイオマス発電について２事例を紹介した。

木質ペレットは、森林から発生する間伐材、樹皮、のこ屑などを細粉・加圧してペレット状に加工したもので、木材の部位や製造方法から各種呼び名が異なる。樹皮を含まない樹幹のみの木質ペレットはホワイトペレット、樹皮と樹幹からなるものはブラウンペレット（全木ペレット）で、木質ペレットを半炭化したものはブラックペレットと呼ばれる。今回は、そのうち半炭化したブラックペレットについて説明します。「バイオマスの活用を巡る状況」の記述にあったように木質ペレットは樹木の成長過程で吸収したCO2を燃焼時に出すことからプラスマイナスゼロと考えられています。また、ブラックペレットは半炭化しているため、通常の炭化していない木質ペレットと比較して含水率が低く（１～３％程度と考えられる）、火力発電所等における石炭との混焼その他その利活用が考えられています。

前回紹介した2事例の一つ目が木質バイオマス混焼試験を推進した伊藤忠ネクサスの連結子会社である防府エネルギーサービス運営の石炭火力発電所であり、二つ目が同じく石炭火力発電での二酸化炭素排出削減の観点で混焼から将来的には専焼を目指している出光興産の事例であったが、今回はその第2弾として、出光興産での取組みを詳細に紹介いたします。

出光興産によれば、ブラックペレットは通常のホワイトペレットである木質ペレットと比較して、発熱量が高く、HGI（ハードグローブ粉砕性指数）が高く、燃料比が高い。また、既設設備であれば低混焼比率の場合、改造なく利活用でき、高比率の混合利用や専焼転換の場合、軽微な改造で実現可能であると期待されている点から、ブラックペレットは低炭素燃料（LCF）と考えられている。出光興産としてもその点から、2030年温室効果ガス削減目標46%削減達成の切り札と期待している。

※HGI：
ハードグローブ粉砕性指数。石炭及びコークスの粉砕のし易さを表す代表的な指数の一つで、国内の石炭火力発電所では石炭を粒子状に細かく粉砕して燃焼させる微粉炭火力発電方式が主に用いられている。石炭粉砕性は品質を評価する重要な指標。

石炭火力発電所を利活用して二酸化炭素の削減に寄与できるブラックペレットの課題に関しては前回、価格問題（半炭化のための追加コスト）および調達問題（大量調達することが容易でない）であると報告いたしました。一つ目の課題である価格問題ですが、残渣活用や大型化によりコスト削減の余地はあるとのことである。また、二つ目の課題である調達に関しては、その製法からの検討が必要となる。ブラックペレットの製造方法としては、ロータリーキルンなどの加熱炉で半炭化するトレファクション法と圧力容器で蒸煮する水蒸気爆砕法の二通りの技術が日本では主として導入されており、前者のトレファクション法は、日本でのトライアル実績が多く、先にペレット化してその後半炭化する方法TAP法と、先に半炭化するTBP法がある。各製造方法にはそれぞれ長所短所はあるが、価格同様に残渣活用により大量かつ安定供給は可能と考えられている。

追加情報として、新たに考えられる課題としては、輸送と揚荷役に関する課題と貯蔵に関する課題が紹介されている。輸送等については、新規燃料のため国際輸送貨物の安全規制コードであるIMSBCコードが完備されていないことから、その物性に合わせたコード取得が課題となる。貯蔵に関しては、ブラックペレットは屋外ヤードでの長期貯蔵しても性状に変化がないという特徴と疎水性を有しているが、ドレイン中のCOD,BODが上昇するということが分かっており、降雨対策（ドレイン中のCOD,BODが上昇）や排水処理対策が必要となるとのこと。

専焼化に関しては、UBE三菱セメントで試験をされており、ブラックペレット100%に置き換えた燃焼テストの結果、給炭系緊急消火設備は設置したものの、ミル本体は改造せず石炭粉砕時のままで5日間の連続テストで問題ないことが報告されていることから、専焼化についても希望が持てると考えられる。

出光興産ではブラックペレット研究会を設立されるとともに、政策提言も併せて行われている。

最後に、ブラックペレットはエネルギーの安全保障の観点からも有望であることから、今後の取組みに期待したい。なお、新たな情報が分かれば第3弾として報告いたします。