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非化石価値取引市場について(その2)
―FIT非化石「電源証明」型証書へー

非化石価値取引市場について(その1)で述べた通り、内閣府に新設された「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」から「需要家が再エネを調達しやすくなるように、需要家が直接証書を購入できる仕組みやトラッキング制度の整備が必要」などの要請があり、需要家が直接証書を購入できる仕組みについては、取引市場を分割し需要家が直接購入する市場を創設する方針が示されたところである。

一方トラッキング制度については、2021.4.26に開催された会合(電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会)で国際動向も踏まえてFIT証書を、電源の種類、設置者名、発電所所在地などを示す電源証明型とする方針が示された。

現行のFIT再エネ証書は再エネという価値を訴求したものであり、将来的に電源種の選択ニーズが高まったときには対応ができない。「電源証明」型証書は、電源種ごとの対応が可能であり需要家ニーズを踏まえた取引が可能となるものである。欧米で一般化している、こうした電源証明は、事業者が脱炭素化に向けた自らの取組を対外的に示していくことに用いられており、2050年カーボンニュートラルの実現を目指す中で、今後、より一層必要性が高まることが見込まれる。

現状、トラッキング制度については実証試験中であり、電源証明が必要なため情報開示に当たり発電事業者の同意を得ることとしているが、同意を得た証書は僅か(1~2%)にとどまっている。2021.6.3に開催された会合(再エネ大量導入・次世代電力ネット小委)において、FIT証書については、FITが需要家の賦課金により支えられているという制度趣旨に鑑み、トラッキング付き証書の活用は、発電事業者の同意取得を不要とする方向(但し、需要家等が対外的に公表する場合、発電事業者の同意を求める)が示されたところであり、今後の再エネ価値取引市場の活性化が期待される。

また、FIT再エネ証書を電源証明型とすることにより証書の収入は再エネ賦課金の低減に資することとなるが、一方、新たな再エネ投資につながるものではない。今後は、需要家が非FIT電源(卒FIT、FIP電源等)を含めて自然エネルギー由来の証書全てについて、電力と証書を切り離した取引ができるような仕組みの検討が必要と考える。

再エネ価値取引市場における証書の性質
(電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会2021.4.26配布資料より抜粋)
再エネ価値取引市場における証書の性質
トラッキング実証の実績
(「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース2021.2.3」エネ庁配布資料より抜粋)
再エネ価値取引市場における証書の性質
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