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非化石証書の動向(その3)

非化石価値取引市場は、「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」の「中間とりまとめ」において、以下の2つの目的で創設された。

  • ①非化石価値を顕在化し、取引可能とすることで、小売電気事業者の高度化法上の非化石電源目標の達成を後押しする。
  • ②需要家にとっての選択肢を拡大しつつ、固定価格買取制度(FIT制度)による国民負担の軽減に資する。

非化石証書の取引については、2018年5月に非化石価値取引市場が創設され、FIT電源由来のFIT非化石証書の取引が開始された。その後、2020年4月からは非FIT電源由来の非化石証書の取引(相対取引)が開始、11月にはJEPX(日本卸電力取引所)で初回のオークションも実施された。

非化石証書については、本年度から導入された高度化法における中間目標値の設定のほか、環境配慮への高まりに伴う需要の増加等の影響から、オークションにおける約定量は増加基調にあるが、実際の利用者からの意見等を踏まえると、いくつかの制度面での課題が顕在化してきた。そこで、このような状況を踏まえ、制度導入による効果や具体的な活用事例を整理するなど、これまでの総括を行うとともに、更なる制度活用のための課題事項を整理するとともに制度見直しの方針が示された。

制度の見直しにあたっては、市場創設の趣旨を損なわないことを大前提とした上で、電気の再エネ価値に対する需要家のアクセス環境の改善を実現するため、目的毎に取引を分けている欧米の事例も参考に、①現行の非化石証書市場を、小売電気事業者の高度化法上の義務の達成のための市場(高度化法義務達成市場(仮))と、②需要家も市場取引に参加可能とする再エネ価値の取引市場(再エネ価値取引市場(仮))に分けることとなった。

その際、需要家も取引に参加可能となる再エネ価値取引市場での取引では、国民負担の下に成り立つFIT電源由来の再エネ価値を、それを求める需要家に広くアクセス可能にする観点から、FIT非化石証書を対象とし、他方、高度化法義務達成市場における取引では、非FIT非化石証書を対象とすることとなった。

今回の非化石証書市場の制度見直しによって、需要家がFIT非化石証書を直接購入可能となった。今後は、非化石証書と同様に環境価値を取引するグリーン電力証書は大きな影響を受けることが思慮される。現在、グリーン電力証書の取引価格はkWh当たり7円程度であり、非化石証書の1.3円程度に比べると価格に大きな開きがある。現在RE100等への対応策としてグリーン電力証書を購入している需要家が非化石証書への移行を検討することが想定される。今後のグリーン電力証書の展望はますます厳しいと言わざるを得ない。

【ご参考】

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