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非化石価値取引市場について(その3)
―2020年度取引結果について―

非化石価値取引市場について(その1)に示すように、「高度化法義務達成市場」と「再エネ価値取引市場」に分割され、それぞれについて詳細検討が進んでおり、今後は需要家が再エネを調達しやすくなるものと期待している。また、日本卸電力取引所(JEPX)より2020年度の全体の取引結果が公表されたこともあり、今後について気が付いた点について述べる。

【非FIT非化石証書について】
取引結果を見ると非FIT非化石証書(再エネ指定なし、あり)の約定量の合計がFIT非化石証書の約定量の10倍以上となっており、大半は旧一般電気事業者が保有する大型水力や原子力によるものと想定される。今後、新設される再エネ価値取引市場での証書は、従来と異なり高度化法の目標達成には利用できないこともあり、非FIT非化石証書を取引する高度化法義務達成市場での取引が更に活性化することが想定される。

一方、今後、高度化法義務達成市場で取引される大型水力や原子力は主に旧一般電気事業者が保有するものであり、こうした電源設備は、地域独占を許されてきた旧一般電気事業者が総括原価方式のもと消費者から電気料金として回収して建設されたものである。今後は、これらの証書の取扱いの検討や電源別に取引できるようにする仕組みの検討が必要ではないだろうか。

【FIT非化石証書について】
FIT非化石証書の取引結果を見ると入札参加者は大幅増となっているが、上記の通り約定量が非FIT非化石証書と比較して少なく、また、約定価格が最低価格である1.3円/kWhに張り付いている。 海外での自然エネルギー証書の取引価格は、おおよそ0.1~0.2円/kWh程度で日本の価格の10分の1の水準である。

今後の再エネ価値取引市場はトラッキング制度の整備などで取引の活性化が期待される。ただし、最低価格の設定については、当面は、再エネ発電側の投資インセンティブもあるので最低価格の設定はやむを得ないものと思うが、将来的には最低価格の水準を徐々に引き下げるか或いは本来の形として最低価格を撤廃した取引ができるようにすることが必要ではないだろうか。

日本卸電力取引所 「2020年度 非化石価値取引市場取引結果」
日本卸電力取引所 「2020年度 非化石価値取引市場取引結果」
非化石証書と海外を含む他の環境価値取引制度との比較
(電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会2021.3.1配布資料より抜粋)
非化石証書と海外を含む他の環境価値取引制度との比較
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