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海外の再エネ事情(Regaining Europe’s Energy Sovereignty, Agora)

Agora Energiewende は2022年3月に発表した”Regaining Europe’s Energy Sov-ereignty”で、欧州諸国のロシアからの天然ガス依存からの脱却について考察をしています。

2022年3月、欧州諸国はロシアからの化石燃料の輸入を段階的に廃止することに合意しました。欧州委員会は輸入廃止による不足分を賄うために“RePowerEU”計画を2022年5月末までに構築する予定です。

化石燃料のうち、石油と石炭に関しては世界的に取引が行われているため、他国からの供給が見込まれますが、天然ガスについては簡単にはいかないようです。

EU27カ国の2020年の天然ガスの消費量は、およそ3800TWhですが、国内生産量は過去10年で消費量の10%までに減少しており、90%は輸入(ロシア:40%、ノルウェー:20%、北アフリカ:10%)に依存しています。

欧州諸国のうち、最大の天然ガス消費国はドイツとイタリアであり、オランダ、ハンガリー、クロアチア、ドイツ、ルーマニアでは、エネルギー需要の一位が天然ガスです。

天然ガスは、ビルの暖房、発電、産業におけるエネルギー源として利用されています。

欧州委員会からは、ロシアからの天然ガスの代替として、船舶によるLNG輸入やアゼルバイジャンからのパイプラインを検討するとともに、2030年のバイオメタン製造目標値を17bcmから35bcmに増やすことを提唱しています。

天然ガス需要を短期間に削減することは、欧州諸国のエネルギー安全保障の強化だけでなく、温暖化防止策としても有効であると考えられています。

天然ガス消費量削減による付随的な利益は、天然ガス輸入に対する費用削減です。

2027年までに1200TWh削減すると、2027年までに1270-3180億ユーロの節約となると試算されています。

Agoraでは、EU諸国の2030年と2050年の温暖化防止目標に基づく産業、建築物、発電事業での化石燃料削減モデルに基づく試算を行い、欧州諸国は2027年末までに天然ガスの消費量を1200TWh削減できるとしています。これは、現状のロシアからの天然ガス輸入量の80%を削減可能とするもので、代替供給策と組み合わせれば100%削減を可能にするものです。削減の可能性としては、発電部門が最大で-500TWh, 次いで建築部門で-480TWh, 産業部門で少なくとも-223TWhから最大で-410TWhとなっています。

現在、EUでは2030年までに風力発電設備を427GW、太陽光発電設備を383GWとすることを目的としていましたが、今回のRePowerEU計画では、風力発電設備を480GW、太陽光発電設備を420GWとするように見直されています。2021年のEUにおける導入量は、風力発電が192GW, 太陽光発電が158GWです。

【参考】

  • ・Regarding Europe’s Energy Sovereignty, Agora Energiewnde
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