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改正省エネ法について(1)―非化石エネルギーの導入を加速化―

省エネ法などの改正案を盛り込んだエネルギー関連束ね法案が国会で審議され、2022.5.13に成立した。省エネ法改正案は、需要サイドでの非化石エネルギーの導入拡大に向けた見直しが主体となっており、その概要について紹介する。(詳細は、https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/036.html 参照)

(1)使用の合理化対象の拡大

現行の省エネ法では化石エネルギーの使用の合理化や効率化などを目的としており、非化石エネルギーは対象としていない。例えば、非化石エネルギーである水素・アンモニア【注記】は資源豊富な海外から調達することが必要となり、一定の供給制約があるため効率的な利用が不可欠となる。このため今回の改正においては、非化石エネルギーを含むすべてのエネルギーに対象を拡大する。【注記】上記、エネルギー関連束ね法案において、水素・アンモニアを非化石エネに定義する高度化法改正案が同日成立している。

(2)非化石エネルギーへの転換

現行の制度では、非化石エネルギーの導入分については化石エネルギー使用分のオフセット扱いになるものの、非化石エネルギーへの転換を促すための積極的な制度とは言えない。

このため、改正においては特定事業者等【注記】に対して非化石エネルギーの転換に関する中長期計画の作成義務や利用状況の定期報告を求める。【注記】 特定事業者等とは、エネルギー使用量1,500kl/年以上の大手事業者や輸送事業者、特定荷主等多岐にわたり、1万3000社(令和元年度時点)を超える。

特定事業者等はこれまでも省エネ法のもと、エネルギー使用量を年1%以上減らすよう努力することを求められてきており、非化石エネルギーへの転換は自主的取り組みであった。今回の改正においては、非化石エネルギーへの転換は義務となる。

(3)電気需要の最適化

現行の制度では、夏冬の昼間の時間帯の電気需要は抑えて、夜間にシフトする平準化(ピークカット)を一律に需要家に求めてきた。一方、太陽光発電の増加により再エネ電気の出力制御が実施される等新たな課題が発生している。発電された再エネ電気を有効活用するためにも、電気需要の最適化が求められていることから以下の方向で電気需要平準化規定が見直される。

  • ①再エネ余剰電力が発生している時間帯に需要をシフト(上げDR)し、需給逼迫時に需要を抑制(下げDR)するなど、電気の需給状況に応じて需要を最適化する枠組み(供給サイドの変動に応じて電気換算係数を変動させる等)を設ける。
  • ②供給サイド(電気事業者等)に対しても、需要の最適化に資する情報や料金体系(電気需要最適化を促すダイナミックプライシングなど料金メニューの提示等)が提供されるような枠組みも設ける。

改正省エネ法は、今後詳細検討に入り2023年4月の施行を目指している。

今回の改正で再エネを含む非化石エネルギーの導入が加速化されることを期待したい。

一方、エネルギー多消費4業種の中で製紙業を除いて、非化石エネルギーの使用比率は低く(12~17%程度)、1万3000社以上と推定される特定事業者等が再エネ確保のための動きが加速化、更には、「再エネの争奪戦」が始まるとの意見もあり今後の動きを注視していきたい。

現行省エネ法の概要(省エネルギー小委員会2021.12.24 配布資料より抜粋)
エネルギー定義の見直しと非化石エネルギーへの転換(省エネルギー小委員会2021.12.24 配布資料より抜粋)
エネルギー多消費4業種の非化石エネルギー使用比率(省エネルギー小委員会2021.12.24 配布資料より抜粋)
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