新エネルギー「最近の話題・キーワード」解説コーナ-新エネルギー「最近の話題・キーワード」解説コーナ-

カーボンニュートラルに向けた国土交通省の取り組みについて

国土交通省では、令和3年7月に「国土交通省グリーン社会実現推進本部」を設置し、「脱炭素社会」、「気候変動対応社会」、「自然共生社会」、「循環型社会」の実現に精力的に取り組んでいる。令和4年には直接関係する法律改正だけで3件(航空分野全体(航空会社・空港)の脱炭素化を推進する航空法等の一部改正、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部改正、港湾における脱炭素化を推進する港湾法の一部改正)を行っている他、直接的に関係するものではないが脱炭素化に向けた様々な活動に大きな影響を持つ盛土規制法も成立させている。また、こうした法制度面の整備だけでなく、技術開発や予算・税制等による支援策等も併せて同省の広範な所掌分野全体で積極的な活動を行っている。その背景には、一つは気候変動に伴う自然災害の多発に対抗するためのレジリエンスの強化の要請があり、また国際的には航空、港湾・船舶、さらには車等の運輸・交通分野での国際協調の要請があるように思われる。

この解説コーナーで、そのすべてを紹介することは難しいので、全体については下記の参考資料を参照いただくとして、以下ではその中からいくつかを選んで紹介することとする。

  • (1)住宅・建築物の省エネ対策の徹底と木材利用の促進
    • ① 令和4年6月の建築物省エネ法の改正で、これまでは大・中規模の非住宅を対象にしていた省エネ基準適合義務をすべての新築住宅・非住宅に拡大する。ただし、中小工務店や審査側の体制整備(建築確認の中で一体的に行う)に十分な準備期間を付与するため、2025年度から実施する。
    • ② 関係省庁との連携により、ZEB、ZEH等の普及や省エネ改修に対する支援を実施する。また販売や賃貸の際の省エネ性能の表示を推進する。
    • ③ 建築基準の合理化や支援等により、炭素の吸収源対策の強化に寄与する木材利用を促進する。
  • (2)カーボンニュートラルポートの形成
    港湾の脱炭素化対応については、次の3つの視点からの検討が必要となる。
    • (ⅰ)サプライチェーンの脱炭素化を考える荷主から選ばれる港湾となるための港湾施設そのものの低・脱炭素化(荷役機械の低・脱炭素化、停泊中の船舶への電力供給等)
    • (ⅱ)船舶への低・脱炭素燃料の供給(水素・アンモニア等)
    • (ⅲ)周辺の臨海部に立地する産業群の脱炭素化への貢献
    令和4年11月に成立した港湾法の改正により、港湾管理者は関係する地方自治体、物流事業者、立地企業等からなる港湾脱炭素化推進協議会を組織し、港湾脱炭素化推進計画を作成し、対応を進めていくこととされた。現在、41港湾において先行的に協議会等が設置されている。同様な枠組みは既に航空分野でも作られているが、上記(ⅲ)の視点からの検討の持つ重みが格段に異なるように思われる。
  • (3)洋上風力発電の導入促進
    再エネ海域利用法に基づく促進区域の指定、事業者公募等の手続きを経済産業省と協力して円滑に進めるとともに、洋上風力発電設備の設置及び維持管理に不可欠となる基地港湾の計画的な整備を推進する。
  • (4)ハイブリッドダムの取り組みによる水力発電の強化
    治水機能の強化(放流設備の改造、嵩上げ等)と水力発電を両立するダムの運用等を行う「ハイブリッドダム」の取り組みを推進する。
  • (5)下水道バイオマス等の利用促進
    下水道バイオマス等の利用推進に向けた革新的技術の導入を行うとともに、下水道技術の普及促進に向け、予算ツールを総動員して下水処理場丸ごと脱炭素化を実証する「カーボンニュートラル地域モデル処理場計画」を推進していく。
    また、農林水産省と連携して下水汚泥の肥料利用を促進していく。
  • (6)空港、鉄道、道路等のインフラ空間を活用した太陽光発電の導入促進
    道路等のインフラの空きスペース等を活用して太陽光発電等を行うとともに、道の駅等の防災拠点としての機能強化を図る。

以上であるが、さらに個人的には、「都市構造の変革」(都市機能の集約+ネットワークの活用+公共交通の利用によるコンパクトな街づくり)が、将来を見据えた重要なテーマと思われるところである。

【参考資料】

  • ・令和4年11月29日内閣官房GX実行会議資料5「GXの実現に向けた国土交通省の主な取り組みについて」
  • ・令和4年9月28日国土交通省グリーン社会実現推進本部第4回会議「GXの実現に向けた国土交通省各分野の取組について」資料1、資料2
ページトップへ