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家庭用燃料電池(エネファーム)設置に係る補助金の再開

家庭用燃料電池(エネファーム)の設置についての国の補助金が2年ぶりに始まることとなった。エネファームへの補助金は2009年度から12年間行われ、2020年度をもって一旦終了した。その後もZEH補助金等の中で補助対象機器の一つとしては補助の対象となっていたが、単独の設備として補助の対象となるのは2年ぶりである。

補助事業の正式な名称は、令和4年度補正「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金」であり、略称は「給湯省エネ事業」である。以下本件補助事業の概要について紹介する。

  • (1)まず、本件補助事業は令和4年度第2次補正予算において経済産業省、国土交通省、環境省の3省連携により行うこととなった「住宅の省エネリフォーム支援」の一部であり、3省連携で行う事業の全体をまとめた共通ホームページを「住宅省エネ2023キャンペーン」として開設している。全体に関心のある場合はこのホームページから見ていただきたい。3省の連携事業は次のとおりである。
    • ・国土交通省:こどもエコ住まい事業(予算1500億円)
    • ・経済産業省・環境省:先進的窓リノベ事業(予算1000億円)
    • ・経済産業省:給湯省エネ事業(予算300億円)
    いずれの事業も令和5年3月31日から補助金の交付申請の受付を始めることとしている。
  • (2)そして本件給湯省エネ事業では、家庭用燃料電池(エネファーム)を含め3つの種類の高効率給湯器を対象に補助を行うこととしている
    • ➀ヒートポンプ給湯器(エコキュート):補助額5万円/台
    • ➁ハイブリッド給湯器:補助額5万円/台
    • ③家庭用燃料電池(エネファーム):補助額15万円/台
    補助額は予定である。なお、ハイブリッド給湯器とは、ヒートポンプ給湯器とガス温水機器を組み合わせたもので二つの熱源を効率的に用いることで高効率な給湯を行うものである。
  • (3)家庭用燃料電池の補助事業については、従来、一般社団法人燃料電池普及促進協会(FCA)が行ってきたところであるが、今回の補助事業については、上述のように3つの種類のものを対象に補助を行うことから、一般社団法人環境共創イニシアティブ(SII)において実施されることとなった。対象となる機器は省エネ法に基づくトップランナー制度における省エネ基準を満たすもの等とされており、家庭用燃料電池についてはFCAの製品登録に必要な要件を満たしたものは支援の対象となるとのことである。
  • (4)今回の補助金の最大の特徴は、補助金の申請手続きについて申請者(補助金の支給対象となる個人等)と機器の設置について契約をした事業者が手続き代行者として、申請者に代わり交付申請等の手続きを行うという点である。もちろん、個人向けの補助金の場合には、こうした手続きに不慣れな個人に代わって事業者が手続きを代行することは従来から行われていたところであるが、今回の補助事業では、それを事実上の代行ではなく、正式な手続きとして取り込んでいるところに特色がある。事業者はまず手続き代行を行う事業者としての登録を補助金交付機関に対して行っておく必要がある。注文を受け契約した事業者はまずこの登録を行った後でないと工事に着工できず、登録前に着工した場合は補助金の交付対象にはならないという仕組みになっている。そして工事完了後の補助金の交付申請手続きも手続き代行者のみが行うことができることとされている。なお、交付決定後の補助金の支払いは申請者に対して行われる。こうした新しいスキームはこのコロナ禍の3年間で得られた補助金事業の運営に係る知見によるものなのかもしれない。

本件補助事業の紹介としては以上であり、これまで家庭用燃料電池の普及に携わってきた者としてはうれしいことであるが、残念なのは本件補助事業が補正予算によるという点である。一般に当初予算で認められた新規事業の場合には5年間くらいは続くのではないかとの期待が持てるが、補正予算ではまさに単年度限りとなりそうである。本件事業が、令和5年3月31日の申請受付開始時からスタートダッシュで補助金交付実績を積み上げ、令和6年度の当初予算要求につながって行くことを期待するところである。

【参考】

  • ・Renewable 2022 Global Status Report, REN21
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