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海外の再エネ事情(Renewables in Energy Supply: Global Status Report)

2023年にREN21が発表した”Renewables in Energy Supply: Global Status Report”では、世界における再生可能エネルギーへの投資についてまとめています。

2022年の再生可能エネルギーによる発電に対する投資は、ブラジル、中国、インドでは増加しましたが、欧州とアメリカでは減少しました。50 MW以上の水力発電を除いた再生可能エネルギーに対する世界の投資額は、中国が55%、次いで欧州(11.3%)、中国とインドを除くアジア・オセアニア(10.8%)、アメリカ(10.0%)となっています。

中国における再生可能エネルギーへの投資は、国の長期的な脱炭素化目標と電力需要の増加が推進力となっており、2022年に56.2%増の2,744億ドルに達しました。太陽光発電の設置容量が継続的に増加しているのは、中国の地方自治体の施策での支援と同時に、商業および産業主体による分散型太陽光発電への関心の高まりによるものであり、投資額は78.9%増の1,645億ドルとなりました。中国は国家レベルでの風力発電への直接的な補助金支援を段階的に廃止していますが、地方政府は土地取得などプロジェクト投資を継続しており、投資額は33.2%増の1,090億ドルに達しています。

欧州では、2022年に再生可能エネルギープロジェクトへの投資が26%減の559億ドルになりました。この減少は、インフレにより予想収益よりコストが上回ってしまうことや、国家が電力市場に異なる収入上限を設定したことで、投資家の信頼を揺るがせたことが要因となりました。このような状況でも、投資額が増加した国もありました。イタリアでは、再生可能エネルギーへの投資が53.2%増の36.9億ドルに、スペインでは36.3%増の105億ドルに成長しました。ブルガリア、エストニア、ルーマニアも顕著な増加を示しています。
他の国では、投資が大幅に減少しました。フランスでは、投資が35.6%減の44億ドルになり、ドイツでは32.8%減の88億ドル、イギリスでは81.4%減の22億ドルに急落しました。イギリスの投資の急落は、食料安全保障の懸念を理由とした農地での太陽光発電を禁止する政策や、陸上風力発電所を阻害する都市計画法によるものです。再生可能エネルギーへの投資においては、スペインが首位、次いでドイツ、ポーランドとなっています。

アジア-オセアニア地域(中国とインドを除く)の再生可能エネルギーへの投資額は、7.7%減の537億ドルになりました。これは、日本(29.4%減の125億ドル)と韓国(4.2%減の67億ドル)での減少が反映された結果です。この地域の太陽光発電への投資はわずかに増加しましたが(3.4%増の398億ドル)、2020年のレベルには及びませんでした。ベトナムはこの地域で最大の太陽光発電市場ですが、2020年末に固定価格買取制度が廃止された後、投資が減少しています。
アジア-オセアニア地域における風力発電への投資は、15.9%減の121億ドルとなりました。この減少は、系統連携の難しさによるもので、この地域共通の問題となっています。バイオ燃料への投資は大幅に増加し、239.6%増の1.8億ドルになりました。この増加は、欧州連合(EU)がパーム油の輸入に持続可能性の規制を課した後、インドネシアとマレーシアが現地のパーム油産業を支援するために導入したインセンティブによるものです。

先進国の中で最も再生可能エネルギーへの投資額が多かったのはアメリカですが、投資額は近年の減少傾向を継続し、10%減の495億ドルになりました。太陽光発電への投資は16.1%減の255億ドル、風力発電への投資は24.6%減の152億ドルに減少しました。アメリカの投資減少は、2021年に見られた供給チェーンの問題、許可とグリッド接続の障害、利用可能な連邦税控除の減少、モジュールの輸入に影響を与える関税やその他の貿易措置に関する不確実性が続いていることなどに起因しています。

インドでは、再生可能エネルギーへの総新規投資額が4.4%増の115億ドルに増加しました。太陽光発電への投資は19%増の86億ドルに増加しました。バイオ燃料への投資はわずかに増加し、風力発電など他の再生可能エネルギーへの投資は減少しています。インドでは、太陽光発電の特性(より迅速に展開できることとグリッド接続の問題が少ないこと)が風力発電に比べて大きな利点となっています。インドの風力発電への投資は、風力資源が豊富な地域や送電網に近い地域での新規プロジェクトの土地確保の困難さ、または固定価格買取制度から入札への転換などの理由から、まだ2016年のピークに回復していません。

ブラジルの再生可能エネルギーへの総投資額は18.3%増の148億ドルに増加しました。2021年の成長の延長として、2022年には太陽光発電への投資が23.7%増加し、風力発電への投資が14.5%増加しました。他の再生可能エネルギーへの投資は停滞または減少しています。ブラジルの風力発電への投資は過去最高に達し、政府主導のオークションとは関連しない電力購入契約によって支えられています。これは非規制電力市場のシェアが拡大し、企業のクリーンエネルギーへの需要が増えていることを示しています。バイオマス発電に対する投資の割合は減少していますが、継続的な投資が確保されています。

アメリカ大陸(ブラジルとアメリカを除く)では、再生可能エネルギーへの投資額は2021年に比べわずかに減少し、166億ドルとなりました。太陽光発電への投資額は16%増の118億ドルとなりましたが、風力など他の技術では投資額が減少し、風力は9.6%減の48億ドルとなりました。バイオ燃料への投資額は100%減少し、わずか1.1億ドルにとどまりました。投資額の減少はインフレ、コロナ禍における支援策の終了、弱い現地通貨、経済成長の鈍化などの影響によるものです。

アルゼンチンでは、経済的な混乱や金融危機、さらには送電インフラの障害により、新たな再生可能エネルギーへの投資額が急激に減少しました。チリは、2022年には相対的に低い水準でしたが、依然としてこの地域での重要な投資先となっています。コロンビアは風力と太陽光発電における重要な市場となっています。両国ともに、可変性のある再生可能エネルギーのより大規模なグリッド統合を支援するため、ユーティリティスケールのバッテリー容量を導入する取り組みを進めていますが、この地域での導入はまだ初期段階です。

中東とアフリカでは、再生可能エネルギーへの投資額は3.0%増の84億ドルとなりました。地域での投資額の増加を牽引したのは、南アフリカ(45.4%増の22億ドル)、エジプト(669.2%増の18億ドル)、イスラエル(9.2%増の9.9億ドル)です。南アフリカの驚異的な再生可能エネルギーへの投資増加は、2021年11月に石炭火力発電所の廃止と再生可能エネルギー導入のための専用資金(当初85億ドル)が発表されたことも一因となっていると思われます。この「Just Energy Transition Investment Plan」には、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカ、EUなどが参加しています。

多くの発展途上国や新興国は、先進国と比べて再生可能エネルギープロジェクトの資金調達に固有の課題を抱えています。政治的な不安定さ、マクロ経済の不確実性(インフレや為替レートに関連するもの)、ライセンスや許可、権利などの承認を取得するためのプロセスの設計や実施に関する問題、制度上の弱点、透明性の欠如などが、これらの国での投資を複雑にする要因となります。国に関連するリスクや未発達な現地金融システムは、資本費用に直接影響を与えることもあります。新興および発展途上国では、資金調達コストはアメリカやヨーロッパ諸国などの先進国に比べて最大7倍高くなる場合もあります。

Renewables in Energy Supply: Global Trends, REN21
Renewables in Energy Supply: Global Trends, REN21

【参考】

  • ・Renewables in Energy Supply: Global Trends, REN21
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