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合成燃料「e燃料(e-fuel)」の活用

合成燃料「e燃料(e-fuel)」は、再生可能エネルギー由来の水素と大気中のCO₂を合成することで生成される液体燃料で、炭化水素化合物の集合体であることから「人工的な原油」とも呼ばれている。原油に比べ硫黄分や重金属分が少なく、エネルギー密度がガソリンや軽油などと同程度なのが特徴とされる。常温常圧の液体で、水素などの新燃料に比べ、長期備蓄できる点も実用性が高いとされている。

原料製造から製品利用までの製品ライフサイクル全体において、カーボンニュートラル(CO₂排出量実質ゼロ)を達成するエネルギーとして注目され、EUにおいても、2035年以降もネットゼロ燃料として、内燃機関車での利用を認める方向にあることから、脚光を浴びている。ガソリンの代替燃料として自動車用に使えるだけでなく、航空機燃料や暖房用にも使える。流通にあたり、貯蔵タンクやパイプラインなど既存のインフラを活用できることや、自動車、船舶、航空機のエンジンに手を加えることなく利用が可能であることから、脱炭素化の早期実現策として期待され、社会実装が求められている。

この度、出光興産(株)は、北海道・苫小牧の北海道製油所で、再生可能エネルギーからのグリーン電力と、工場等から排出されるCO₂を活用した「e燃料(e fuel)」の製造に乗り出すと発表した。出光興産では、製造する「e燃料」の原料として、風力発電による再エネ電力で水を電解して製造する「グリーン水素」と、自社の製油所や市内工場などから排出されるCO₂から合成するとしている。2030年までの製品化を目指す。

また出光では製造した「e燃料」を、従来の石油と同じようにガソリンスタンドなどへの供給を目指すとしている。同製油所では年間約800万k㍑の原油処理をしており、その一部を「e燃料」で置き換えることも予定しているという。新千歳空港や大規模工業地帯などに近い立地を生かして、2030年までに「e燃料」の製造や流通の供給網を構築したい考えとしている。

今後の課題は、製造コストの引き下げにかかっている。現在、「e燃料」の製造コストは1㍑当たり300~700円程度とされ、市販ガソリンの2~4.5倍。これにDAC(Direct Air Capture)やCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)でCO₂低下を進めるコストを加えると、さらにコストアップする。出光興産は2030年にかけて、再エネ価格の低下等が進むことで、将来的には200円程度にまで下がると見込んでいる。

「人工的な石油」として注目され、再生可能資源からの電気エネルギーを液体燃料や気体燃料に化学結合により蓄えることで作られる合成燃料「e燃料(e-fuel:Electrofuels)の今後の動向に期待したい。

【参考資料】

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