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五島市におけるゼロカーボンシティの取組み-浮体式洋上風力-

2023年11月、ゼロカーボンシティの取組みを進めている五島市を訪問したので、内容を紹介します。

まず、ゼロカーボンシティとは環境省が進めている取組で以下URLによれば以下のようになっている。

<ゼロカーボンシティとは(URL情報から抜粋)>

2050年ゼロカーボンシティの表明について
環境省としては、「2050年にCO2(二酸化炭素)を実質ゼロにすることを目指す旨を首長自らが又は地方自治体として公表された地方自治体」をゼロカーボンシティとしております。

2050年ゼロカーボンシティの表明方法の例

  • (1)定例記者会見やイベント等において、「2050年CO2(二酸化炭素)実質排出ゼロ」を目指すことを首長が表明
  • (2)議会で「2050年CO2(二酸化炭素)実質排出ゼロ」を目指すことを首長が表明
  • (3)報道機関へのプレスリリースで「2050年CO2(二酸化炭素)実質排出ゼロ」を目指すことを首長が表明
  • (4)各地方自治体ホームページにおいて、「2050年CO2(二酸化炭素)実質排出ゼロ」を目指すことを表明
https://www.env.go.jp/content/000155428.pdf

参考までに、以下URLによればこれまでに(2023.9.29)ゼロカーボンシティを表明した地方公共団体は、991自治体(46都道府県、558市、22特別区、317町、48村)となっている。
https://www.kyushu.meti.go.jp/seisaku/energy/oshirase/210301_1_2.pdf

今回その中でユニークな取組みを進めている五島市を訪問したので、紹介いたします。五島市は、九州の最西端、長崎県の西方海上約100kmに位置して、大小152の島々からなる五島列島の南西部にあって、総面積が420.90㎢、11の有人島と52の無人島で構成されている。五島市としては、令和2年12月17日、「ゼロカーボンシティ」を宣言しました(全国の自治体で197番目)。ゼロカーボンシティとしては、洋上/陸上風力発電、太陽光発電、水力発電、バイオマス発電、HEMS/BEMSなど多岐にわたっているが、その中で、特に以下のような海洋再生可能エネルギーに力を注いでいる。

  • ①浮体式洋上風力発電実証事業・実用化
    ・環境省事業で2MW級の浮体式洋上風力発電実証事業を成功させ、洋上風力FITが適用された洋上風力発電所として商業運転開始(H28.4~)
  • ②潮流発電実証事業
    ・環境省「潮流発電技術実用化推進事業」により、五島市奈留瀬戸において令和3年1月に500kWの潮流発電設備が海底に設置され、実証事業中。
  • ③ウィンドファーム(22MW)
    ・ウィンドファームは新法における促進区域の指定を受け、令和3年6月に事業者が選定された(令和5年度運転開始予定)

この内、今回は浮体式洋上風力発電を中心に報告いたします。

五島市においては、まず2MW級の浮体式洋上風力発電実証事業を成功させ、現在商業運転をしている“はえんかぜ”設置に取り組んだ。これまでの経緯とその概要は以下となっている。(下記URLを一部参照)

  • 1)経緯
    2010年 環境省実証事業受託
    2012年 小規模試験機(1/2スケール、100kW)設置 〜 系統連系した日本初の浮体式洋上風力発電施設
    2013年 実証機(2,000kW)設置 〜 日本初の商用スケール浮体式洋上風力発電施設
    2015年 実証機を崎山沖へ移動
    2016年 環境省事業終了後、五島市と五島フローティングウインドパワー合同会社による運転継続
  • 2)概要
    ・風力発電機: ダウンウィンド型(2MW級)
    ・浮体施設 : ハイブリッドスパー型、3点係留カテナリー方式
    ・計画   : 現在3基設置、最終計画9基
    ・全長   : 172m(喫水:76m、ハブ高さ:56m、ローター直径:80m)
    ・形状寸法 : 浮体直径最大7.8m、タワー直径最大4.8m
    ・重量   : 約3,400トン(係留チェーンを除く)
    ・その他  : 海底ケーブル延長約5km
https://haenkaze.com/about/about-facility/

風力発電機は日立製作所HTW2.0-80(ダウンウィンド型、2MW級)、浮体施設はハイブリッドスパー型、3点係留カテナリー方式となっている。

五島市で進めている浮体式洋上風力はダウンウィンド型風車を採用しているが、以下URLによれば、台風や雷などが多い日本の自然環境に適合した風車で、浮体式洋上風力においては、アップウィンド型と比較して発電効率の向上が期待できるほか、風見鶏効果によりローターが自然に風を受け流すため、風荷重を低減でき、スパー型浮体との組み合わせでは特に動揺安定性に優れているとのことである。
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/archive/prev/news_data/h/h1/news7/2013_1/131028_1

また、現在はえんかぜを含め3基の浮体式洋上風力が崎山沖に設置されており、今後2.1MWの浮体式洋上風力を8基まで増加する予定となっている。

今回、海上タクシーで椛島沖に設置の日本初の浮体式洋上風力発電「はえんかぜ」施設を至近距離(ローター直径80m)まで船を近づけて実際に見学してきた。当日の天候は晴れであったが、風速が不足(4m/sec以上で風車が回転)のため、回転する様子は見れなかったが、ブレード長40mを身近にみると、その壮観さは想像以上であった。また、浮体式洋上風力装置での発電は1,800世帯分の発電量に相当するとのことである。なお、“はえんかぜ”とは、南東の風、という意味で、はえんかぜは、幸せを運ぶという言い伝えがあるとのことで、命名は当時の環境大臣の石原伸晃氏らによって命名された。

ただし、残念なことに日立製作所が風力発電機の生産から撤退することが、日経ビジネスの取材で2019年1月25日、明らかになった。すでに新規の受注活動を停止しており、契約済みの製品の生産が終わり次第、埠頭工場(茨城県日立市)での風力発電機の生産を止める見通しだ。日立は子会社が提携する独メーカーの風力発電機の販売と、保守や運転支援などのサービス事業に軸足を移す考えとのことである。日本としては今後の取組みを官民協力して推進すべきと考える。

さらに、奈留島と久賀島の間の奈留瀬戸で潮流発電にも取組んでおり、規模は500kWになっている。

五島市としては、RE100についても五島版RE100として取り組んでおり、五島市民電力が提供する「五島産電気」と、事務局が別途取得する「Jクレジット」とを組み合わせて、五島産価値(産地証明)および環境価値&特定電源価値(再生可能エネルギー100%・CO2ゼロ)を提供している。

本取組みについては今後とも注目していき、順次報告していきたいと考えます。

浮体式洋上風力発電装置 はえんかぜ
浮体式洋上風力発電装置
はえんかぜ
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